パブリック・エネミーズ

2009/11/09 東宝東和試写室
ジョニー・デップが伝説の銀行強盗を演じる実録犯罪ドラマ。
脱獄や強盗など見せ場はたっぷり。by K. Hattori

映画「パブリック・エネミーズ」オリジナル・サウンドトラック  1930年代にアメリカ中西部で銀行強盗を重ね、貧しい者の金は盗まず、逮捕されても何度も脱獄を繰り返すといった行動から大衆のヒーローとなった実在のギャング、ジョン・デリンジャーの伝記映画。デリンジャーは人気のあるギャングなので過去に何度も映画化されているが、今回はジョニー・デップがデリンジャーを演じている。実際のデリンジャーの写真を見ると、がっちりした体格のタフガイという感じだが、デップのデリンジャーはスマートでエレガントでロマンチック。愛する女のために命を賭ける、大胆不敵なアウトローとして描かれている。

 1930年代の風俗やファッションが華麗に再現されているのがこの映画の見どころで、デリンジャーが最後を遂げる劇場周辺の様子などはかなり緻密に再現されている様子。デリンジャーと仲間たちが銀行を襲撃するシーンや立てこもった山荘を取り囲むFBIとの銃撃戦など、随所に見せ場たっぷりなのだ。デリンジャーの強盗稼業は1933年5月に始まり、翌年7月には彼の射殺で終止符を打たれている。わずか1年3ヶ月ほどのアウトロー人生で、太く短く打ち上げ花火のように大輪の花を咲かせて散ったのだ。映画ではこのあたりの時間経過が、あまり伝わってこなかったのが残念と言えば残念。短い時間の中にいろいろなエピソードが詰め込まれているので、映画に描かれた時間が数年分はあるような気がしてしまった。でも、実際は1年ちょっとなのだ。

 アウトロー映画の常道として、この映画でも主人公は「古いタイプの男」として描かれている。狙うのは銀行専門で、仲間は信頼できる馴染みの連中ばかり。滅多なことでは銃を使わず、一般人を傷つけることはしない。仲間内の信義に厚く、愛する女のために命を賭ける。実際のデリンジャーがどうだったのかは知らないが、この映画のデリンジャーはそんな昔気質の古風な男なのだ。しかし銀行強盗という犯罪は、もはや時代遅れのものになっている。映画の中ではデリンジャーを支援する犯罪シンジゲートの人間が、「お前が銀行を襲って手に入れるぐらいの金は、競馬のノミ屋なら電話を使うだけで1日で稼げる」と豪語する。現ナマを暴力的に強奪してくる強盗団の仕事は、電話網を駆使して顧客から注文を取り付けるノミ屋に劣るのだ。ノミ屋は薄暗い部屋に電話を何十本も引くだけで、アメリカ中の顧客から金を引っ張ってくる。金融犯罪、ネットワーク型犯罪のはしりだろう。しかしこうした「新型の犯罪」をデリンジャーは受け入れられず、昔ながらの強盗稼業にこだわり続ける。

 デリンジャーが活躍した時代は、金融恐慌で世界中がどん底の状態だった。銀行を襲って金を奪うデリンジャーは、『キャピタリズム/マネーは踊る』でマイケル・ムーアがやろうとしていたことを実行した男でもある。ムーアは道化だが、デリンジャーはヒーローになった。

(原題:Public Enemies)

12月12日公開予定 TOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー
配給:東宝東和
2009年|2時間21分|アメリカ|カラー|スコープ・サイズ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://www.public-enemy1.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:パブリック・エネミーズ
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