ミレニアム

ドラゴン・タトゥーの女

2009/11/02 シネマート六本木(Screen 4)
40年前の少女失踪事件を調べ始めた男が知る驚愕の真実とは。
ベストセラー・ミステリーの映画化。by K. Hattori

Mireniamu  社会派雑誌「ミレニアム」の編集長ミカエルは、大物実業家の不正な武器密売疑惑をすっぱ抜いたものの、名誉毀損裁判で禁固3ヶ月と損害賠償の有罪判決を受けてしまう。責任をとって雑誌の仕事を離れたミカエルのもとに、大企業ヴァンゲル・グループの元会長から仕事の依頼が持ち込まれる。刑務所に収監されるまでの時間を使って、40年前に起きた姪の失踪事件について調べてほしいというのだ。早速事件の調査を始めたミカエルのもとに、捜査のヒントになりそうなメールが送られてくる。それは40年前の失踪事件が、その前後に起きていた連続女性殺人事件と関連を持つという指摘だった。メールの差出人は天才的な女性ハッカーのリスベット。警備会社の依頼でミカエルの身辺を調べていた彼女は、ミカエルの人柄や調査内容に興味を持ってメールで助け船を出したのだ。彼女の能力に感心したミカエルは早速協力を依頼し、ふたりで事件の真相を調べ始める……。

 原作は2005年にスウェーデンで発行された同名ミステリー小説。全5部作構想で第3部まで発行されている人気シリーズだが、原作者スティーグ・ラーソンが1作目の発行直前に急死したため、4部以降の刊行は途絶えてしまった。ベストセラーとなり世界中で翻訳されたこの作品は、スウェーデンで早速映画化とテレビドラマ化の企画がスタート。本作『ミレニアム/ドラゴン・タトゥーの女』は、その映画版第1作というわけだ。映画版3部作はすべて完成していて、スウェーデンではこの1作目が今年2月公開、2作目『火と戯れる女』が9月公開、3作目『眠れる女と狂卓の騎士』が11月公開ということになっている。日本でも原作はベストセラーになっているのだが、映画版の2作目3作目が公開されるかどうかはこの1作目の客入り次第だろう。映画も面白いので、これはぜひヒットして2作目以降の劇場公開につなげてほしいところだ。(2・3作はDVD直行という気がするけどね。)

 映画の主人公はジャーナリストのミカエルだが、それを食ってしまう本作の実質的な主人公は天才ハッカーのリスベットだ。ミカエルが別のキャラクターに置き換えられてもこの映画は成り立つが、リスベットを他のキャラクターに置き換えることはできない。しかしリスベットの攻撃的で反社会的な態度は、そのままでは観客(小説なら読者)の共感を得られるようなものではないため、観客と彼女を結びつける緩衝材としてミカエルが果たしている意味は大きい。

 原題は「女を憎む男たち」というもので、男たちによる女性に対する性暴力を告発することがテーマのひとつになっている。リスベットはこうした暴力に抵抗し復讐するのだが、復讐は自分自身が大きなリスクを負わねばならない危険な賭けでもある。一か八かの復讐が成功しても、心の痛みが癒されることは決してないだろう。

(原題:Man som hatar kvinnor)

2010年1月公開予定 シネマライズ
配給:ギャガ 宣伝:ギャガ、Lem
2009年|2時間33分|スウェーデン、デンマーク、ドイツ|カラー|シネスコ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://millennium.gaga.ne.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ミレニアム/ドラゴン・タトゥーの女
原作:ミレニアム1ドラゴン・タトゥーの女
原作シリーズ:ミレニアム(スティーグ・ラーソン)
関連DVD:ニールス・アルデン・オプレヴ監督
関連DVD:マイケル・ニクヴィスト
関連DVD:ノオミ・ラパス
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