E.YAZAWA

ROCK

2009/10/26 東映試写室
今年還暦を迎えたロックンローラー矢沢永吉の記録映画。
永ちゃんは今もまだ現役で走り続ける。by K. Hattori

Rock  矢沢永吉、1949年生まれ。72年にジョニー大倉らと結成したバンド、キャロルでメジャーデビューし、「ファンキー・モンキー・ベイビー」などが大ヒット。75年にバンドを解散した後はソロで活動し、78年には「時間よ止まれ」が大ヒットし、自伝「成りあがり」もベストセラーになった。80年には最初のドキュメンタリー映画『矢沢永吉 RUN & RUN』公開。この時のプロデューサーが、本作『E.YAZAWA ROCK』を監督する増田久雄だ。矢沢永吉はその後も音楽シーンのトップをひた走り、今年還暦記念の誕生日ライブを行ったばかり。増田久雄も映画プロデューサーとして映画界で活躍していた。そのふたりが再び合流したのが07年夏のこと。久しぶりに『RUN & RUN』を観たふたりは新しい映画を作ることに合意し、同年9月から撮影開始。12月の武道館100回記念ライブが映画のクライマックスになる予定だったのだが……。

 1時間半の映画のうち、8割ほどは100回記念ライブがらみの映像だ。メンバーたちとの打ち合わせと、入念なリハーサル。矢沢永吉は楽曲のほとんどを自分で作曲し、アレンジもこなしているのだが、ここで彼流のアレンジテクニックが観られるのは面白い。自分で譜面を書くわけではなく、メンバーに対して口三味線(口ギター?)でメロディやリズムを指示していくのだ。こうしてライブに向けて準備を整えていく合間に、メンバーの紹介やインタビューが入り、矢沢永吉本人の過去の足跡をたどるインタビューや記録映像が入り、いろいろな思いを込めてライブ当日へとなだれ込んでいくという作りはよくできている。コンサート映像も迫力があって、矢沢永吉のファンでなくても身震いするようなシーンが幾つかあるはずだ。やがてコンサートは終わる。これで映画もエンディングになれば、これはこれで1本のまとまったコンサート記録映画になっただろう。

 でもそうはならないのだ。映画の撮影が終わって編集・仕上げをしている最中に、矢沢永吉本人がこの映画の製作にストップをかけた。「まだ本当の自分がさらけだせてない」というのが矢沢永吉本人の言い分。監督はこの言葉を受けて、さらに1年間、矢沢永吉の還暦記念ライブまで取材を続けることになる。これは映画としては明らかに蛇足であって、余計な付け足しだ。こんなものはわざわざ本編に繰り込まずに、DVDの特典映像にでも入れればよかったのではないか? 映画を観ているときはそう思う。

 だが映画を観終わると、この印象は少し変わるのだ。「きれいな型にはまらない」ことこそ、矢沢永吉というキャラクターなのではないだろうか。この映画は構成のバランスが悪いが、それは矢沢永吉というアーティストが今も現役で走り続けているひとつの証拠だと思う。立ち止まらない男。それが矢沢永吉なのだ。

11月21日公開 新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給:東映 宣伝:P2、グアパ・グアポ
2009年|1時間31分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.rock-yazawa.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連DVD:矢沢永吉
関連CD:矢沢永吉
関連書籍:矢沢永吉
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