96時間

2009/06/26 20世紀フォックス試写室
人身売買組織に誘拐された娘を救出する元CIAの工作員。
リーアム・ニーソンが本格アクションに挑戦。by K. Hattori

Taken [Original Soundtrack]  U2のユーロツアーを追い掛けるため、パリを訪れたアメリカのバカ娘ふたり組。馴れない外国にすっかり舞い上がり、空港のタクシー乗り場で出会ったイケメン男に愛想を振りまいたのが運の尽き。彼は最近パリで暗躍する人身売買組織の末端構成員で、少人数で旅行に来ている若い外国人女性を誘拐しては売り飛ばしていたのだ。かくしてふたりのバカ娘もあっという間に誘拐されてしまう。普通ならこのまま、事件は完全に闇に葬られてしまっただろう。だが今回は勝手が違った。誘拐した娘のひとりの父親が、CIAの元工作員という特殊技能と特殊なコネの持ち主だった。彼ブライアン・ミルズは愛娘のキムを救出するため単身パリに乗り込み、数百人規模とも言われるアルバニア系マフィアに戦いを挑む。彼は娘の身に危害が及ぶ前に、無事娘を救出することが出来るのか? 制限時間は96時間。それを過ぎて被害者が救出されたケースはないという……。

 リュック・ベッソン製作のB級アクション・スリラー。主人公ブライアンを演じるのはリュック・ベッソン。元妻レノーアを演じるのはファムケ・ヤンセンで、娘キムをマギー・グレイスが演じている。物語はとにかく単純素朴なもので、これがまがりなりにも全国公開されるのは映画の質云々以前に、リュック・ベッソンやリーアム・ニーソンというネームバリューゆえだろう。映画の内容自体を問うなら、こんなものはそのままスティーブン・セガールの『沈黙の○○』に転用できそうなレベルだと断言できる。つまり映画のデキとしては銀座シネパトス単館公開からビデオ市場に一直線という水準だ。(パトスで公開されるものが、すべてレベルが低いわけではないけどね。)

 娘が誘拐されてから救出までの探求型スリラーはそれなりに面白いのだが、主人公が娘の旅行を巡って元妻とごちゃごちゃもめるくだりや、娘の天真爛漫すぎるはしゃぎっぷりには鼻白む気がする。このあまりにも説明がくどい三文芝居が、「フロム・パトス・トゥー・ビデオ」たるゆえんなのだ。「パリは危険すぎるから、俺も一緒に行く!」と主人公が言いだすのには苦笑するしかない。まあ娘は17歳の世間知らずな高校生という設定だから父親が心配するのは自然だけれど、「外国に行ったら必ず犯罪に巻き込まれるに決まっている!」とでも言わんばかりの態度はほとんどパラノイアだ。ここまで大騒ぎしてしまうと、むしろ娘が誘拐されて「良かったね」とさえ思ってしまうではないか。これで娘が何事もなく欧州旅行から戻ってきたら、「お父さんは娘を心配しているようで、じつは束縛しているだけなのだ」とさらに評価が悪くなったことだろう。主人公は娘が誘拐されればこそ、自分の持った特殊技能を娘や元妻に披露して感謝と尊敬を勝ち取ることが出来た。主人公は誘拐グループを憎んだり恨んだりせず、むしろ感謝した方がいいぐらいだ。でも主人公は敵を全員殺す。なんという恩知らず!

(原題:Taken)

8月22日公開予定 TOHOシネマズユウラク座ほか全国ロードショー
配給:20世紀フォックス 宣伝:ドリーム・アーツ
2008年|1時間33分|フランス|カラー|シネマスコープ|ドルビーSR、SRD、DTS
関連ホームページ:http://movies.foxjapan.com/96hours/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:96時間
サントラCD:Taken
関連DVD:リュック・ベッソン(製作)
関連DVD:ピエール・モレル監督
関連DVD:リーアム・ニーソン
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