ヤッターマン

2009/02/18 松竹試写室
往年の人気アニメを三池崇史監督が完全実写映画化。
映像は最高だが話がやけに湿っぽい。by K. Hattori

 1977年(昭和52年)から足かけ3年にわたって放送され、現在はリメイク・シリーズを放送中の人気アニメ「ヤッターマン」を三池崇史監督で実写映画化。これがひとつの映画としてどれだけ楽しいかというのは、じつはあまり問題にならない。これは原作アニメの持ち味をいかに実写にするかという、その変換方程式を楽しむ映画なのだ。原作を踏まえた上で、「なるほどそうなるか」「そう来ましたね」「ふむふむ、そうやっちゃったわけね」などと批評的なツッコミを入れながら鑑賞するのが、この映画に対する最も正しい接し方。これは原作アニメのファンやかつてファンだった人に向けて作られた、サービス過剰な番外編なのだ。

 2次元の存在だった主要キャラやメカが、現実の俳優によって血肉を持った存在となり、3次元のリアルな存在になっていることがこの映画の面白さ。その点でおそらく最も力が入っているのは「ドロンボー一味」の再現だろう。生瀬勝久のボヤッキーとケンドーコバヤシのトンズラーは、もはやこれ以外に考えられないぐらい見事にハマっている。ドロンジョ役の深田恭子については賛否ありそうだが、僕はこれは十分にアリだと思う。この役は原作アニメの印象が強烈すぎて、どのみち誰が演じたって原作にはかないっこない。製作発表の段階では「アンジェリーナ・ジョリーにオファー中」などと荒唐無稽なキャスティング構想も伝えられていたが、要するにそのぐらい飛び跳ねたキャスト案を考えないことには原作に負けちゃうということだろう。

 深田恭子のドロンジョは原作と似てもにつかない甘ちゃんぶりで、おそらく事前にこのキャスティングを想像していた人は皆無だと思う。観客の誰も想定していなかった、まったく未知数の新しいドロンジョがここに存在する。原作を基準にこのドロンジョを見れば、これはどう考えてもミスキャストでミスマッチ。しかし僕にはむしろ、この似合わないキャスティングこそがこの映画の肝だと思う。原作アニメのキャラに馴染めないフカキョン・ドロンジョの弛緩した雰囲気こそが、アニメから実写へという変換作業でどうしても埋められないギャップを象徴してもいるように見えて仕方がないのだ。何をどう工夫しようが、アニメをその雰囲気のまま100%実写に置き換えることなどできようはずがない。ならば「実写では不可能」という現実に対して、正々堂々と開き直っちゃうしかないではないか。深田恭子というキャスティングはその開き直りの結果であって、これはこれでひとつの正解なのだ。

 これは映画館のスクリーンを使った、豪華で贅沢なコスプレショー。そう割り切って楽しむことだ。この映画で最も残念なのは、上映時間が長いこと。この程度の話なら、もっとテンポアップして1時間25分ぐらいに縮めてほしかった。観客に考える余地を与えない、猛烈なスピード感がほしい。

3月7日公開予定 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
配給:松竹、日活 宣伝:日活
2009年|1時間51分|日本|カラー|シネマスコープサイズ|ドルビーデジタルサラウンドEX
関連ホームページ:http://www.yatterman-movie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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