1994年に製作された『ストリートファイター』が75年に製作された同名映画のリメイクでも続編でもないように、本作『ストリートファイター/ザ・レジェンド・オブ・チュンリー』は94年や75年の映画とは何の関係もない作品だと考えた方がいい。94年の映画は確かに同じゲームの実写映画版という共通点はあるし、今回の映画で主人公となるチュンリーは94年の映画にも登場していた。(演じていたのはディズニー・アニメ『ムーラン』でヒロインの声を演じ、「ER 緊急救命室」の第6シリーズからレギュラー出演しているミン・ナ。)しかし今回の映画はそうした過去をすべてリセット、なにも無かったことにしての仕切り直しだ。正義の主人公が悪の組織シャドルーと戦うという物語の枠組みは共通するが、他の要素はゲームをもとにゼロから作り直されている。
中国人実業家の父とアメリカ人の母の間に生まれ、幼い頃から何不自由のない生活を送ってきたチュンリー。しかしある日自宅に侵入した暴漢たちによって父は拉致され、そのまま父は行方不明となった。それから10年後、ピアニストになったチュンリーのもとに謎めいたメッセージが届けられる。それは行方不明になった父を捜すため、バンコクにいるゲンという男を訪ねろというもの。母を病気で亡くし天涯孤独の身となっていた彼女は、メッセージに従ってバンコクに飛ぶ。彼女はそこでようやく巡り会ったゲンから、父の拉致にまつわる恐るべき事実を知らされるのだった……。
ゲーム原作のヒロイン・アクションものとしては、最近の成功作としてミラ・ジョヴォヴィッチ主演の『バイオハザード』シリーズや、アンジェリーナ・ジョリー主演の『トゥームレイダー』シリーズがすぐ連想される。しかしそうした映画に比べると、本作はもう涙が出るぐらいにチャッチイのだ。そもそもかけている予算が違う。予算のなさはキャスティングに直結し、この映画の中では主演のクリスティン・クルックも含めて、名前も顔も知らないような小粒の俳優ばかりが出演している(例外はマイケル・クラーク・ダンカン)。せめて敵のボス役にもうちょっと名の知れた俳優を持ってくるとか、ゲンやヒロインの父親役にビッグネームをゲスト出演させるぐらいのことはしてほしかった。
アクションシーンはがんばっているのだが、アクションが生きるも死ぬも結局は脚本次第。しかし本作の予算のなさは脚本の練り上げ不足にもつながっていて、映画を観ていても辻褄の合わない矛盾点や行き当たりばったりの迷走があまりに多すぎる。脚本をもう少しきちんと作れば、低予算でもそれなりに見応えのあるピリッとした映画になったはず。周辺エピソードや敵のデタラメさはともかく、とりあえずヒロインの身辺だけでももうちょと何とかならなかったんだろうか。映画製作における企画開発の大切さを痛感させられる映画だ。
(原題:Street Fighter: The Legend of Chun-Li)
DVD:ストリートファイター/ザ・レジェンド・オブ・チュンリー
サントラCD:Street Fighter: Legend of Chun-Li 関連DVD:アンジェイ・バートコウィアク監督 関連DVD:クリスティン・クルック 関連DVD:ロビン・ショウ 関連DVD:クリス・クライン 関連DVD:ムーン・ブラッドグッド 関連DVD:ニール・マクドノー 関連DVD:マイケル・クラーク・ダンカン |