次郎長三国志

2008/10/01 楽天地シネマズ錦糸町(シネマ3)
昔ながらの娯楽時代劇で楽しく仕上がってはいるけれど……。
次郎長一家がみんな老けてるなぁ。by K. Hattori

映画「次郎長三国志」オリジナルサウンドトラック  村上元三の小説「次郎長三国志」を映画化したものというより、サイレント時代から活躍していた大監督・マキノ雅弘が東宝と東映で2度に渡って映画化した人気シリーズ『次郎長三国志』を、甥っ子であり東映版には増川仙右衛門役で出演していた津川雅彦が映画化した作品と言った方がいいだろう。幕末に活躍した実在の侠客・清水次郎長の一代記だが、映画ではケンカの仲裁で名を上げて一家を構えた次郎長が、けんか出入りのいざこざから他のやくざや役人に追われながら旅先で愛妻お蝶を失うまでを描く。次郎長一家の結束は固く、近隣に侠名はとろどいても、まだまだ東海一の大親分と呼ばれるにはほど遠い貧乏所帯だ。ライバルである甲州黒駒の勝蔵との戦いなどもまだ先の話で、この映画だけ観るなら、長い長い次郎長一代記のまだ入口に差し掛かったばかりなのだ。『次郎長三国志』としてなんとか物語の体裁を作るなら、少なくとも続編を1本、できれば2本作って三部作以上にしなければなるまい。しかしこの映画、はたして続編は作れるかな……。

 マキノ雅弘は『次郎長三国志』以外にもたくさんの次郎長ものを作っているし、当時は他の監督たちも次郎長映画をたくさん作っていた。かつては映画以外にも講談や浪曲で次郎長ものが広く親しまれており(二代目・広沢虎蔵の浪花節は有名)、次郎長ものは忠臣蔵と同じぐらい、日本人にとってよく知られている物語だったのだ。誰もが知る物語だからこそ、長い物語を何部にも分けて映画化することができる。お馴染みの登場人物それぞれに見せ場を用意して、豪華なキャストで映画化することには顔見世興行的な楽しさがあった。しかし今はどうか。清水次郎長は少なくとも現代の観客にとって、それほどなじみ深いキャラクターではない。次郎長の人となりや各キャラクターの説明を、いちいち最初からやらなければならないのだ。このため映画のテンポが悪くなる。立て板に水でさくさく先に進みたい話が、どうしたってまどろっこしくなる。テンポ重視で説明をはしょれば、話の流れがわかりにくくなる。

 今回の映画は若くて貧しい次郎長が一家を構えてこれから売り出していこうかという話なのだが、出演者たちがみんな中年で貫禄たっぷり。次郎長の愛妻・お蝶を演じる鈴木京香などはすっかり大年増で、初々しい新妻を演じさせるには年を食いすぎている。なにも年を取っているのが悪いという意味ではない。年相応の役というものがあるだろう、というだけの話だ。これと同じぐらい困ってしまうのが温水洋一の石松。岸部一徳の大政なんて、孫がいそうな老人ではないか。

 出演者たちの年齢に合わせて、映画館の観客も中高年ばかりが目立った。この日は映画ファン感謝デーで1,000円均一の割引だったが、おそらくこの客たちは普段からシルバー料金で1,000円均一に違いない。彼らはこの映画の中の誰に、自分を重ね合わせるのだろうか。

9月20日公開 角川シネマ新宿ほか全国ロードショー
配給:角川映画
2008年|2時間6分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.jirocho-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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サントラCD:次郎長三国志
原作:次郎長三国志(村上元三)
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