インビジブル・ターゲット

2008/07/30 Togen虎ノ門試写室
1億米ドルを奪った強盗グループが香港に舞い戻ってくる。
ベニー・チャン監督の新作ポリス・アクション。by K. Hattori

 香港の繁華街で白昼堂々、現金輸送車が襲われる事件が発生する。奪われた金は1億米ドル。警察の必死の捜査も空しく、犯人グループは忽然と姿を消してしまう。それから半年後。事件の巻き添えで婚約者を殺されたチャン刑事は、犯人グループの一部が再び香港に潜入していることを知る。同じ頃、移動中のグループと偶然出くわしたフォン警部補は、小さな油断からみすみす犯人を取り逃がしてしまう大失態。ふたりは強盗団と接点がある元警官の情報を求めて、その弟であるワイ巡査に接近する。3人は強盗グループ逮捕のため協力することになるのだが……。

 『ジェネックス・コップ』シリーズや『香港国際警察/NEW POLICE STORY』のベニー・チャン監督が、ニコラス・ツェー、ジェイシー・チャン、ショーン・ユー主演で撮ったポリス・アクション映画。映画の冒頭からラストまで、派手で見応えのあるアクションシーンの連続。それがドラマを弱くしているかというとさにあらずで、いささか型通りではあるがねちっこいドラマが繰り広げられる。普通の映画1本半ぐらいの内容が、2時間強の映画にぎっしり詰め込まれたフルコース。欠点は映画が山場ばかりで、最後に少し大味な印象が残ること。野球で言うならこれは、打者一巡の猛攻が交互に続くような大乱打戦なのだ。しかしテンポ良くずんずん前に進んでいく物語は、観ていて心地よい疲労感。これはこれで作り手の狙いなのだろう。

 犯人グループはかなり冷酷で荒っぽいように見えて、捕らえた主人公たちを殺さないなど行動に一定の原理原則があるようだ。しかしそれが映画を観ている側に曖昧にしか伝わってこないので、ここから「掟に殉じる美学」のようなものは見えない。もっともそうした掟があからさまになってしまえば、この映画のサスペンスは半減してしまう。犯人たちが何をしでかすかわからない獰猛さを秘めているという前提が、この映画のスリルを生み出しているのだ。犯人グループのリーダー格を演じたウー・ジンやアンディ・オンはアクションの切れ味も鋭く、存在感も主役3人に負けない重みがある。警察全体を敵に回してきりきり舞いさせ、どれほど血が流されても顔色ひとつ変えないキャラクターは、感情で突っ走る主役の若い刑事たちといい対比になっていた。

 もうそろそろ終わりかと思っていると、最後の最後に大規模なアクションシーンが用意されている大盤振る舞いのサービス。これをうれしいと感じるか、しつこいと感じるかで映画の評価が変わるだろう。香港アクション映画が好きな人は大喜びしそうだが、話自体はこれ以前に終わっているようなものなので、これを長い長い蛇足と観ることも出来る。1本の映画として考えると、これはバランスが悪い。しかしこんな映画を、バランスよくこぢんまり作っても仕方がない。僕はむしろこれで満足なのだ。

(原題:男児本色 Invisible Target))

8月30日公開予定 シネマスクエアとうきゅう
配給:アートポート
2007年|2時間9分|香港|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.invisible-target.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:インビジブル・ターゲット
関連DVD:ベニー・チャン監督
関連DVD:ニコラス・ツェー
関連DVD:ショーン・ユー
関連DVD:ジェイシー・チャン
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