スターシップ・トゥルーパーズ3

2008/07/10 SPE試写室
1作目の主人公ジョニー・リコが物語に帰還した第3弾。
ファン待望のパワードスーツが登場。by K. Hattori

Starship Troopers 3: Marauder  ロバート・A・ハインラインの「宇宙の戦士」を原作に、ポール・バーホーベンが『スターシップ・トゥルーパーズ』を作ったのは1997年のこと。その後フィル・ティペットが監督する続編が2003年に作られ、今回1作目と2作目の脚本を書いたエド・ニューマイヤーの脚本・監督作として3作目が作られた。今回は1作目の主人公ジョニー・リコが再び主役。リコ役のキャスパー・ヴァン・ディーンも再登場する、正統派の続編だ。原作に登場するパワードスーツが最新兵器マローダーとして登場し、これが原題のサブタイトルにもなっている。

 このシリーズは戦争を遂行する国家の姿が、現実のアメリカ合衆国のパロディになっているのが特徴。今回の映画でテーマになっているのは「戦争と宗教」の関係性だ。物語は人間と昆虫型エイリアンの戦いというぶっ飛んだ設定ではあるものの、世界そのものは我々の暮らす現実世界の延長にある未来。そこで信じられている宗教はキリスト教だ。戦争継続を前提としている社会の中で、キリスト教はいかなる役目を果たすのか。これは結構生々しくてリアルなモチーフなのだが、それが安っぽいキャスティングとチープなアクションシーンの連続で、どっぷりとB級テイストにまみれている。しかしこれは生々しくてリアルな物語がB級に堕落したのではなく、もともとB級のアクション映画に、無理矢理高級なテーマをぶち込もうとした結果かもしれない。その証拠に「戦争と宗教」というテーマは映画の終盤で中途半端なまま投げ出され、結果として破綻してしまった。

 映画にはキリスト教のパロディのような別系統の宗教が出てきて、これがキリスト教信仰そのものを相対化しているようにも見える。キリスト教が正しいなんて何で言い切れるのだろうか。言ってることは怪しげな別の教えとそっくりそのまま同じなのに。ただ拝んでいる神が異なるという理由だけで、ある宗教は正しく、ある宗教は誤っているなんて言えるのだろうか? 宗教は人を現実から遠ざけてありのままの現実を受け入れられなくするが、同時に宗教は絶体絶命の危機の中で人を強くすることもできる。これが戦争と結びつけば、宗教は殺戮行為や大量の犠牲を正当化する「聖戦」の概念を生み出し、過酷な状況でも戦い続ける「神の軍隊」を作り上げることができるのだ。この映画はそれを批判しているのだろうか? それとも肯定しているのだろうか?

 じつはこれより面白いのは、映画の中では何が何でも平和が否定されるという点だった。平和運動家はテロリストであり国家の敵。戦争は空気のように日常と同化し、人びとはもう戦争のない社会など考えられなくなっている。敵と戦うことのみを目的として作られた全体主義国家は、どことなく昆虫の世界と似通っている。長い戦争は敵対する者同士の姿を、互いに似通ったものに変えていくのかもしれない。

(原題:Starship Troopers 3: Marauder)

7月19日公開予定 新宿ジョイシネマ、銀座シネパトス、池袋シネマ・ロサ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2008年|1時間45分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル、ドルビーSR、SDDS
関連ホームページ:http://starship3.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:スターシップ・トゥルーパーズ3
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関連DVD:スターシップ・トゥルーパーズ・シリーズ
原作:宇宙の戦士(ロバート・A・ハインライン)
関連DVD:エド・ニューマイヤー監督
関連DVD:キャスパー・ヴァン・ディーン
関連DVD:ジョリーン・ブラロック
関連DVD:ボリス・コドジョー
関連DVD:スティーヴン・ホーガン
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