シャークウォーター

神秘なる海の世界

2008/05/16 シネカノン試写室
海のギャングと恐れられているサメが乱獲で絶滅の危機。
もうフカヒレを食べたくなくなる。by K. Hattori

Sharkwater  スピルバーグの出世作『ジョーズ』に登場した、凶暴な巨大人食い鮫。その巨大なアゴで人間たちに次々食らいつき、丸呑みにしてきた凶暴な海のギャング。今でも毎年世界の海で人間がサメに襲われ、海水浴場にサメが現れでもしようものなら『ジョーズ』さながらのパニックが海水浴客を震え上がらせる……。だがそんなサメのイメージは、まったくサメの実態を反映していないようなのだ。この映画はカナダの海洋生物学者で水中カメラマンでもあるロブ・スチュワートが、4年の歳月をかけて撮影したドキュメンタリー映画。彼はこの映画撮影中に命の危険を何度か感じたそうだが、それはサメに襲われそうになったからではない。

 監督のスチュワートが言うには、サメは用心深く繊細な動物で、人間がサメを恐がる以上にサメは人間を恐れているそうだ。サメは人間を食べない。サメが人間を襲うことは滅多になく、もし襲われたとしたらそれは不幸な偶然から起きた事故だ。1年間にサメに襲われて死ぬ人の数は数人で、これよりは野生のゾウやワニに襲われて死ぬ人の方が何倍も何十倍も多いという。本当か? いや、これが本当らしいのだ。監督は子供の頃からサメの魅力に取り付かれ、これまで何十何百とサメが泳ぎ回る海に潜ってサメを撮影しているが、咬まれたことは1度もないという。監督にとってサメは友達なのだ。

 ではなぜ監督は、この映画の撮影中に命の危険にさらされたのか? それは相手が人間だったからだ。世界有数のサメ愛好家である監督は、世界中のサメの数がどんどん減っていることを知っている。一部の大型のサメは絶滅の心配さえあるのだ。(『ジョーズ』の悪役だったホホジロザメも激減中。)なぜ世界中の海からサメが消えているのか。それはサメの乱獲が原因。高級中華食材のフカヒレを取るため、世界中の漁師たちがはえ縄漁でサメを捕獲している。釣り上げたサメはヒレだけをナイフで切り取り、金にならない胴体はそのまま海に捨ててしまう。フカヒレ漁は発展途上国の貧しい漁民たちに、現代のゴールドラッシュを巻き起こす。フカヒレを食べない国々でも、輸出目的のフカヒレが盛んなのだ。監督はこのフカヒレ漁と、保護区からのフカヒレ密輸ルートを取材していて、フカヒレを資金源とするアジア系のマフィアに目を付けられてしまったのだ。

 かつて高級食材だったフカヒレだが、最近は中華料理店でかなり庶民的なお値段で出す例も多い。かつてはスープが定番だったが、最近はフカヒレ入りラーメンだの、フカヒレ入り饅頭だの、食べ方のバリエーションも増えて消費も伸びているはずだ。コラーゲンたっぷりで、お肌にいいらしい。でもこの映画を観ると、今後はフカヒレなんて食べてる場合じゃないと考えざるを得ない。

 世の中の見方が大きく変化する映画。環境保護団体シー・シェパードが、英雄のように描かれているのも興味深い。

(原題:Sharkwater)

6月28日公開予定 渋谷Q-AXシネマ
配給:グラッシィ 宣伝:アムモ
2006年|1時間29分|カナダ|カラー|1:1.85|ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.glassymovie.jp/sharkwater/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:シャークウォーター/神秘なる海の世界
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