アース earth

2008/01/16 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン4)
壮大なスケールで描かれる、ネイチャードキュメンタリーの最新作。
日本語吹替版のナレーションは渡辺謙。by K. Hattori

 大ヒットした海洋ドキュメンタリー映画『ディープ・ブルー』のスタッフが、視点を「地球」に広げて製作したネイチャー・ドキュメンタリー映画。『ディープ・ブルー』がテレビ・ドキュメンタリー・シリーズ「ブルー・プラネット」の再編集版だったのと同じく、この『アース』もテレビ・シリーズ「プラネットアース」の再編集版だ。5年の歳月をかけて世界中から集めた映像素材をふんだんに使い、それをわずか1時間36分という時間の中にギュッと凝縮させている。

 映画は北極圏から地球をどんどん南下して、ツンドラ地帯、広大な針葉樹林帯が広がるタイガを抜け、四季の移り変わりが美しい温帯から、赤道直下のジャングルに分け入り、ヒマラヤを越える渡り鳥の旅に同道し、アフリカの砂漠をゾウと共に移動し、クジラと共に南氷洋への長い長い旅をする。大スクリーンに広がるパノラマに時として息を飲み、動物たちのユーモラスな表情に思わず微笑み、過酷な生存競争の現実に背筋が凍り付く。1本の映画としてテーマが一貫しているかというと、必ずしもそうとは言えない部分もあるのだが、映像のクオリティの高さがそれを補って余りある。声高に自然環境の大切さを訴えるわけではないが、おそらくは映画を観た人すべての心の中に、自然に対する畏敬や畏怖の念を植え付ける作品だと思う。

 映画は最初と最後をホッキョクグマでまとめることで、人類の引き起こした急激な地球温暖化が動物を絶滅の危機に追いやっていることを強く訴えかけている。しかし温暖化は人類の引き起こした自然環境破壊の象徴であって、実際には温暖海外にも多くの問題が起きているのだ。乱獲によって絶滅寸前に追いやられている動物がいる。水質汚染や土壌汚染、森林伐採の問題もある。映画を観ると地球にはまだまだ大規模な自然が残されているような錯覚を覚えるのだが、それは画面の中から巧妙に「人間」や「文明」の姿が排除されているからに過ぎないのだろう。

 この手のドキュメンタリーをよく観る人も、おそらく初めて観る映像がいくつかあるはず。僕は水面を高々とジャンプするホオジロザメに驚いた。ホオジロザメはスピルバーグの『ジョーズ』に出てくる巨大なサメだが、それがおそらくは水中の深いところから一気に浮上して、海面近くを泳ぐ小型の海獣を襲うのだ。その勢いのまま、ホオジロザメは巨体を高々と海面の上に躍り上がらせる。イルカのように、サメがジャンプするのだ。アフリカの砂漠にある小さな水場で、飢えたライオンの群れがゾウを襲うシーンにも驚いた。

 オリジナル版のナレーションは『X−メン』シリーズのパトリック・スチュワートだが、これは字幕を読みながら映像を追いかけるより、渡辺謙がナレーションを担当した日本語吹替版を観た方がいいだろう。渡辺謙のナレーションは大げさにはしゃいだ演技をすることなく、映像に寄り添う淡々とした案内人に徹している。

(原題:Earth)

1月12日公開 日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にて
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
2007年|1時間36分|ドイツ、イギリス|カラー|1.85:1|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://earth.gyao.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:アース earth
サントラCD:Planet Earth
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