FLYBOYS

2007/08/28 メディアボックス試写室
第一次大戦中、フランス航空部隊で戦ったアメリカ人青年たち。
実話に基づく航空アクション大作。by K. Hattori

 第一次大戦でヨーロッパが激戦にさらされていた1916年、いまだ中立を保っていたアメリカから志願してフランス航空部隊に入隊し、ドイツ軍と戦った若者たちがいた。(アメリカの参戦は1917年から。)映画はこの実話に基づいており、劇中の人物やエピソードはフィクションながら、それぞれにモデルが存在するという。例えば赤い戦闘機を駆るドイツ側のエース・パイロットは、「レッドバロン(赤い男爵)」として知られる撃墜王フォン・リヒトフォーフェンがモデル。映画の主役であるアメリカ人青年たちにもそれぞれモデルがいたり、複数の人物を組み合わせたりして作り出されたキャラクターらしい。映画の最後に古びたモノクロ写真が出てくるが、おそらくそれが実際のラファイエット戦闘機隊の写真なのではないだろうか。

 映画の見どころは保存されていた実機や精巧なレプリカ、模型、CGなどを駆使した空戦シーン。戦闘機同士の戦いもあれば、爆撃機の迎撃、飛行船の攻撃、戦場に不時着した仲間の救出、敵に悟られないための無音着陸など見せ場はたっぷり。物語としてはそこに、主人公と仲間たちの連帯感や友情、上官と部下の信頼関係、仲間の死、挫折と再生、敵との確執、戦闘に対する葛藤、仲間の仇討ちなど、戦争映画の定番アイテムがぎっしりと詰め込まれている。また主人公とフランス人女性のロマンスも盛り込むなど、内容としてはかなり欲張りで盛りだくさんだ。このため上映時間も2時間18分の大作サイズ。

 思いのほか良かったのは、主演のジェームズ・フランコだ。『スパイダーマン』シリーズで顕著なのだが、この俳優は明るくて朗らかな笑顔の裏側に、暗さや狂気を漂わせることができる。今回演じたローリングスという役は「明るさ」が前面には出ているものの、じつは親兄弟もない孤独な境遇で生家の牧場も破産しているという暗さがピタリと付きまとう。その暗さが観客に悲劇の予感を生み出し、映画を観ていても「主人公だからどうせ最後まで死なない」という安心感を与えてくれることがないのだ。映画を観ながらハラハラドキドキ、最後まで主人公の無事を祈り続けずにはいられない。

 ただしこのハラハラドキドキ感が手に汗握る波瀾万丈の冒険活劇にはならないところが、この映画の弱さかもしれない。航空部隊に入った途端に主人公の命は風前のともしび……、というのがこの映画のハラハラドキドキの正体なのだ。この映画は戦争映画の定石をちゃんと踏まえているのに、戦争映画に付きものの圧倒的なカタルシスがない。息詰まるサスペンスと、そこから解放される小さなカタルシスを組み合わせながら、観客の緊張感と期待感を極限にまで高めて最後に一気に解放してみせるのがアクション映画の醍醐味ではないのか。その点で、この映画はドラマ部分がだいぶ薄味。戦闘シーンは確かにすごいんだけど、ドラマが弱いからパンチ不足になる。

(原題:Flyboys)

11月17日公開予定 シアターN渋谷、ユナイテッドシネマ豊洲ほか全国ロードショー
配給:プレシディオ 宣伝:プレシディオ、アルシネテラン
2006年|2時間18分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|DOLBY DIGITAL、SDDS、DTS
関連ホームページ:http://www.flyboys.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:FLYBOYS
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