Genius Party

2007/06/07 富士ソフト アキバシアター
STUDIO 4°Cが製作した7話オムニバスの短編アニメ集。
いろんな味が楽しめる幕の内弁当。by K. Hattori

 ジャパニメーションと呼ばれて、世界中に多くの熱狂的なファンを持つ日本製アニメ。その中でも宮崎駿のスタジオジブリと同等の高い評価を受けているのが、アニメーション製作会社のSTUDIO4°Cだ。本作『Genius Party』は、7人の監督が7本の短編作品を持ち寄るオムニバス映画。「超時空要塞マクロス」シリーズの河森正治、『マインド・ゲーム』の湯浅政明、「カウボーイビバップ」や「サムライチャンプルー」の渡辺信一郎といった人たちのほかに、アニメーターからイラストレーターに転じた福島敦子、アニメーション美術のベテラン木村真二、漫画家の福山庸治、映像作家でアニメーターでもある二村秀樹など、監督の顔ぶれもユニーク。

 オムニバス映画はどれもそうだが、この映画も各短編の完成度にはばらつきがある。個人的に最も面白く観たのは、湯浅監督の「夢みるキカイ」という短編。逆にもっとも退屈だったのは、二村監督の「LIMIT CYCLE」。映像的にはオープニングにある福島監督の「GENIUS PARTY」や、木村監督の「デスティック・フォー」も見応えがあった。残念だったのは河森監督の「上海大流」で、脚本がいまひとつ。福山監督の「ドアチャイム」は、福山庸治本来の優しい丸みを帯びた線が、アニメーションでうまく再現できなかったのが残念。最終話である渡辺監督の「BABY BLUE」は、観ていてずっと「こんなもの、実写でやればいいんじゃないの?」と思っていた。

 欧米には昔から短編アートアニメーションの伝統があるのだが、日本のアニメは「鉄腕アトム」以来ずっと商用アニメーションが主流で、それが高い評価を受けている。『Genius Party』も商用アニメなのだが、そこに作り手の個性を突っ込んで、アーティスティックに仕上げようとしている作品が幾つかあるのが面白い。「GENIUS PARTY」や「夢みるキカイ」、あるいは「デスティック・フォー」などの作品は、そのまま短編として切り分けてアートアニメとして通用するクオリティを持っている。また一方で日本のアニメーション技術は、人や物をきわめて精巧にアニメーションにすることで、現実を超えた超現実的な風景を描き出してきてもいる。今回の映画で言うなら、「BABY BLUE」などはそうした日常リアリズム路線だろうし、「上海大竜」や「ドアチャイム」、「LIMIT CYCLE」も現実を突き抜けて向こう側の何かに迫ろうとする作品なのだ。オムニバス映画『Genius Party』には、そうした日本アニメのふたつの流れが相乗りしている。

 映画『Genius Party』は日本のアニメーション技術(これはSTUDIO4°Cのアニメーション技術というのと同義だが)のショーケースであり、サンプル集なのだ。続編も作られるそうなので、そちらも楽しみ!

7月7日公開予定 シネ・リーブル池袋、渋谷シネ・アミューズほか
配給:日活 問い合わせ:スキップ
2007年|1時間44分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.genius-party.jp/
DVD:Genius Party
主題歌CD:Genius Party(二千花)
DVD:福島敦子監督
DVD:河森正治監督
DVD:木村真二監督
DVD:福山庸治監督
DVD:二村秀樹監督
DVD:湯浅政明監督
DVD:渡辺信一郎監督
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