ゲゲゲの鬼太郎

2007/05/14 楽天地シネマズ錦糸町(スクリーン3)
水木しげるの代表作をウエンツ瑛士主演で実写映画化。
バカバカしいがこれはこれで楽しい。by K. Hattori

 カルト漫画家・水木しげるの代表作「ゲゲゲの鬼太郎」を、初めて実写映画化したファンタジー・アドベンチャー映画。じつは「鬼太郎」の実写での映像化は今回が初めてというわけではなく、今から20年以上前にフジテレビで1度実写ドラマを作ったことがある。その時、ねずみ男を演じたのは竹中直人。彼が今回の映画で、ねずみ男とのからみで少しゲスト出演しているのはそんな理由によるものなのかも……。監督は松竹で『釣りバカ日誌』シリーズを何本か手がけ、最近はテレビのスペシャルドラマなどを演出していた本木克英。『ドラッグストア・ガール』以来の映画監督作だ。

 主人公の鬼太郎役にウエンツ瑛士という配役はどうかと思ったが、これは意外なことに、わりとハマっていたように思う。もちろん、原作やアニメ版のイメージとはだいぶ違うのだが、このキャスティングがあればこそ、他の場面でも大胆なアレンジが可能になっていたと思うのだ。「原作と映画は別物」とはよく言われることだが、それでもほとんどの原作付き映画は、何とかして原作と映画の中心軸を合わせようとする。しかしこの映画版『ゲゲゲの鬼太郎』は、そもそも中心軸からしてずれているのだ。いや、世界観の骨格や各キャラクターの基本的な設定などは、先行するアニメ版などとさほど違っているわけではない。しかし鬼太郎のビジュアルに関しては、あえて軸を大幅にずらしている。これは猫娘についても同じだ。

 考えてみると、そもそも「ゲゲゲの鬼太郎」という作品の中心軸は、最初から鬼太郎にないのかもしれない。ではこの作品の中心はどこにあるのか? それは目玉おやじだ。初期のアニメ版からテレビドラマ版、そして今回の映画版まで、目玉おやじの声はずっと田の中勇が演じている。丸い目玉に手足というビジュアルも、発表媒体が漫画からアニメ、実写に変わってもさして代わりばえしない。目玉おやじという不動の中心軸がある限り、「ゲゲゲの鬼太郎」はいかようにでもアレンジ可能な作品なのかもしれない。

 今回の映画はかなり急ごしらえで脚本を作った様子。映画導入部にある遊園地建設話は、あっという間に物語の中から消えてしまう。また「妖怪石」の妖力に操られて石を盗んだ人間が、なぜ急に死んでしまうのか理由がよくわからないし、その男にかけられていた窃盗の嫌疑がなぜ晴れたのかも理由が不明だ。これは脚本を各段階で「あとから理由を考えよう」と思っていて結局そのままになったのか、それとも理由は脚本に書かれていたのに、あちこちいじくり回しているうちにカットされてしまったのか。映画の中に小さな不整合はあって当たり前だ。でもこれだけ数があると、「もうちょっと丁寧に脚本を作ってよね!」と文句のひとつも言いたくなるではないか。

 はげヅラのウエンツ瑛士が見られるとか、猫娘役の田中麗奈が最高だったとか、見どころの多い楽しい映画ではあるんだけどね……。

4月28日公開予定 丸の内ピカデリー1ほか全国松竹東急系
配給:松竹
2007年|1時間43分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.gegege.jp/
DVD:ゲゲゲの鬼太郎
原作:ゲゲゲの鬼太郎
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