どろろ

2007/02/19 楽天地シネマズ錦糸町(シネマ1)
手塚治虫の同名伝奇コミックを最新のVFX技術で映画化。
柴咲コウはどうみても女だよな〜。by K. Hattori

 手塚治虫の同名コミックを、塩田明彦監督が柴咲コウと妻夫木聡主演で映画化した伝奇アクション。戦乱の世の覇者たらんとして、魔物たちに我が子の肉体48カ所を捧げた醍醐景光。生まれ落ちた子供・百鬼丸は自分の肉体を取り戻すため、妖怪や魔物を1匹ずつ倒していくことになる。ところが彼が身につける刀に目を付けたこそ泥どろろは、いつかその刀を盗もうと百鬼丸と行動を共にするようになって……。

 原作では百鬼丸が十代後半から二十代前半ぐらいの青年、どろろは十歳そこそこの少年(本当は少女)に設定してある。百鬼丸は身体障害者だが剣の達人。どろろは健康優良児だが腕っ節はからきし。共に両親がいない孤児という身の上だが、一方は医者に育てられていて教養があり、一方は無教養な盗賊の子供。百鬼丸はどろろの保護者だが、どろろが体の不自由な百鬼丸を助けることもある。結構よくできた組み合わせなのだ。それが映画版になると、百鬼丸が二十歳の青年で、どろろも同じ年頃の女になっている。「少女」ではなく「女」である。これはいただけない。

 なんでこんなことになってしまったのか。柴咲コウと妻夫木聡は私生活でも恋人同士だそうで、その話題性が映画のヒットにつながるという計算からだろうか? それとも柴咲コウも出演していた大ヒット映画『黄泉がえり』と、塩田明彦監督のつながりからだろうか? あるいは事務所関係やプロデューサー関係という、映画ファンにはまったく事情の知れない大人の世界の事情によるものだろうか? いずれにせよ、柴咲コウがどろろを演じる段階で、この映画は原作とは別物にすると割り切る必要があったと思う。ところがこの映画は、実際は20代半ばの柴咲コウに、十代のどろろを演じさせるというちぐはぐなことをしている。

 柴咲コウがいくら天真爛漫にどろろを演じようと、腰に付けた鼓をポンポン打ち鳴らしながら「大泥棒のどろろ様よ〜」と啖呵を切ろうと、そこにいるのは25歳の生身の肉体を持つ柴咲コウであって、どろろではないだろう。柴咲コウにどろろを演じさせるなら、どろろというキャラクターの設定自体をもっと大きくいじる必要があったのだ。いっそのこと開き直って、どろろを最初から「男勝りの女」にしてしまうとかね。

 どろろのキャラクターが不自然なのに加え、この映画はもう一方の主役である百鬼丸にも魅力がない。最初から最後まで、喜怒哀楽の表情に乏しいのだ。彼の背負った宿命の大きさだけが全面に押し出されて、百鬼丸の人間像に観客の共感できる要素が少ない。これではなぜどろろが彼を「兄貴」と慕うのかがわからない。この映画の中でかろうじて魅力的な人物になっているのは、中井喜一演じる醍醐景光と、その息子であり嫡男でもある多宝丸ぐらい。素材は悪くないのに、料理法を間違えている映画。その原因は、やはり柴咲コウではあるんだけど……。

1月27日公開 有楽座ほか全国東宝洋画系
配給:東宝
2007年|2時間18分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.dororo.jp/
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