イルマーレ

2006/07/07 ワーナー試写室
韓国映画『イルマーレ』をハリウッドでリメイク。
オリジナルよりゴージャスでリッチ!by K. Hattori

 同名の韓国映画をハリウッドでリメイクした、大人のためのファンタジック・ラブストーリー。ひとつの郵便ポストを介して、2年の時を越えて男女が文通する。主演はキアヌ・リーブスとサンドラ・ブロック。ふたりは『スピード』で共演して以来、なんと12年ぶりの共演になるらしい。『スピード』はバスの中という狭い空間でふたりが常に顔を突き合わせていたが、今回の映画はそれとは対照的に、ふたりが2年という時間の隔たりによって常に引き離されすれ違い続ける。12年をへてふたりが俳優として成長したことも合わせて、『スピード』とはまったく違った印象の映画に仕上がっている。しかしそれでも、ふたりが「巡り合うべく運命づけられた恋人同士」であるかのように見えるのは、かつて『スピード』で観た、ふたりの息のあった掛け合い芝居を記憶しているせいだと思う。

 この映画を一風変わったタイムトラベルの映画だと考えると、映画にはいろいろと辻褄の合わないことが生じて都合が悪くなる。(これは原作となった韓国映画も同じだ。)過去を改変すればそれによって未来にも変化が生じ、ストーリーの整合性は保てなくなってしまうのだ。しかしこれは第三者として、離れた視点から物語を観ることによって生じる矛盾だ。この映画はあくまでも、主人公たちふたりの主観的な世界を描いている。そこには何の矛盾も生じない。出来事の前後関係が、少なくとも主人公たちの内部では順番通りにつながっているからだ。

 例えばこんなエピソードが登場する。未来からの手紙を読んで、過去に住む男が道端に1本の木を植える。すると2年後の世界で、何もなかった場所に突然成長した木が現れるのだ。その木は確かについさっきまで無かった。しかし同時にその木は、2年前から確かにその場に植わっていた。木はなかったが、木はあった……。これは矛盾だ! しかしその矛盾は、主人公たちにとってまったく気にならないし、映画を観ている際もそれをとやかく言う人はいないだろう。ここでは主人公たちの気持ちと映画を観る人の気持ちが、ぴったりと一致している。矛盾に満ちた出来事は、一瞬にして何事も無かったかのように起こり、そこには何の疑問もない。映画の最後に起きるのもそれと同じことだ。

 この映画は結構大きな問題を観る人に投げかけているのかもしれない。ひとつは「人間は未来を変えられる」という当たり前のこと。これは今までにも数多くの映画で描かれてきたテーマだ。そしてもう一つのテーマは、「人間はその意志によって過去さえも変えられる」ということだ。これはちょっと信じがたいことなのだが、この映画が描いているのがあくまでも「主観的な時間」や「主観的な出来事」であることを考えれば納得できなくもない。じつは我々は似たようなことを、常日頃からやっているのだ。そこでは過去に起きた「出来事の意味」が、主観的に書き替えられている。

(原題:The Lake House)

秋公開予定 丸の内ピカデリー1ほか全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
2006年|1時間38分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|SDDS、DTS、Dolby Digital
関連ホームページ:http://wwws.warnerbros.co.jp/thelakehouse/
ホームページ
ホームページへ