プロデューサーズ

2006/02/17 SPE試写室
メル・ブルックスの同名映画を舞台経由で再映画化。
『ヒトラーの春』もパワーアップ。by K. Hattori

 1968年に製作されたメル・ブルックス監督のデビュー作『プロデューサーズ』を、メル・ブルックス本人の製作でミュージカル映画にリメイクしたもの。ただしこれはオリジナル映画を直接リメイクしたわけではなく、間に一度舞台版のミュージカルがはさまっている。スーザン・ストローマン演出で2001年4月にブロードウェイで初演を迎えた舞台「プロデューサーズ」は、主演にネイサン・レインとマシュー・ブロデリックを迎えた話題作として開幕直後から大ヒットし、トニー賞では史上最多の12部門受賞という大記録を打ち立てている。今回の映画は舞台版の演出を担当したストローマンがそのまま監督を担当し、主演のレインとブロデリックなど、主要キャストの多くが舞台版から引き継がれている。その演出スタイルはミュージカル映画というより、舞台臭を強く感じさせるもの。これは1968年の映画『プロデューサーズ』の再映画化というより、2001年初演のミュージカル「プロデューサーズ」を舞台に忠実に映画化したものと言うべきなのだろう。

 僕自身は舞台版を観ていないのだが、ストーリーはほとんど68年の映画と同じだ。主人公たちの事務所で電話番として働くウーラという美人秘書の役割が大きくなり、オーディションでヒトラー役を射止めるイカれた俳優が消えるといった変更はある。ウーラ役が大きくなったのは、金の力でお飾りのセクシー美女を雇うという設定が、時代的に許容されなくなったためだろう。なお68年版の映画はその当時の同時代(つまり1967年頃)を背景としていたが、今回の映画では時代設定が1959年になっている。この時代はブロードウェイ・ミュージカルの黄金時代。映画では劇場の壁に、「ウェストサイド・ストーリー」や「マイ・フェア・レディ」など有名作品のポスターがずらりと張られているのが見える。

 オリジナル版の映画も面白いのだが、現代の観客にはたぶん今回の映画の方が面白く観られると思う。老婆たちを色仕掛けでたらし込んで舞台への出資を迫るゼロ・モルテスや、ヒステリー症で青い毛布の切れ端を常に持ち歩いているジーン・ワイルダーのキャラクターは、現代の目から見るといささか映画的リアリティを逸脱した騒々しい人物たちに違いない。しかし今回の映画は最初から「ミュージカル」という約束事があるため、その騒々しさがまったく傷にならないのだ。

 映画最大の見どころはやはり劇中劇「春の日のヒットラー」なのだが、これはオリジナル版を倍ぐらいにスケールアップしてある。僕はこのシーンを観ながら、嬉しくて涙が出てきた。(このシーン観たさに68年版のDVDを買ったのだ。)ただしこのシーンは、本作が舞台版の忠実な移殖であることを感じさせるシーンでもある。演出を映画的表現に逸脱させることなく、舞台の限界内ですべてを演じさせているのだが、それがこの映画の狙いなのだろう。

(原題:The Producers)

4月公開予定 日劇ほか全国東宝洋画系
配給:ソニー・ピクチャーズ エンターテインメント
2005年|2時間14分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SDDS、SRD
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/theproducers/
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