シムソンズ

2006/02/02 松竹試写室
オリンピックに出場したカーリング・チームの実話を映画化。
カーリングの知識がなくても問題なし。by K. Hattori

 '02年にソルトレークシティの冬季五輪に日本から出場した、女子カーリングチーム「シムソンズ」をモデルにした青春スポーツ映画だ。シムソンズが結成された北海道常呂町でロケを行うなど、モデルとなったチームに多大な敬意を払いつつ、物語自体は映画オリジナルになっている模様。登場人物の名前なども、モデルとなったチームのメンバーとは変えてある。実録ベースではあるが、完全な実録ではなく、しかし最後は現実のシムソンズの映像を出して、映画の世界と現実の橋渡しをするという構成。映画のどの程度が実話からの取材なのかちょっとわからないのだが、モデルとの距離感はやや不透明で、映画を見終わった後もそこに違和感が残る。映画前半の少しずっこけたタッチと、中盤以降の正統派スポーツ映画としての落差も気になった。この映画は決して完璧ではないのだ。だが映画のあらゆる弱点を一切合切吹き飛ばしてしまのが、映画全体から発散される元気さと明るさと初々しさだ。

 加藤ローサ演じる主人公・伊藤和子は、高校3年生になっても将来の展望がまったく見えないでいる。生まれ育った北海道常呂町は、ホタテの養殖とタマネギ栽培以外にこれといった産業もない田舎町。進学のために受験勉強をする意欲もなく、かといって就職をしようという気力もない宙ぶらりんの毎日。その彼女が、なぜか同級生たちとカーリングチームを作る羽目になってしまう。しかし寄せ集めチームの内情はガタガタで、小学生チームにすらストレート負けするありさま。「なんとか1点!」を合い言葉に特訓を始めたものの、チームは気持ちのすれ違いからバラバラになってしまう……。

 正統派のスポーツ青春映画ではあるが、あまり熱くならない軽いタッチ。氷の上だから熱くなりようがないというわけではなく、主人公がカーリングのルールすら知らないまま、何となくチームを作ることになってしまったという設定がそうさせているのだ。舞台となった常呂町ではカーリングが市民スポーツとして親しまれ、学校の授業でもカーリングがあるというぐらいだから、本当なら主人公たちがルールすら知らないというのは奇妙なこと。しかし映画を観る人たちのほとんどはカーリングについてまったく何も知らないという前提なので、この映画では主人公を観客と同じレベルから出発させることにしたのだろう。主人公たちがカーリングの勉強をするのと歩調を揃えて、観客もまたカーリングについてゼロから勉強することになる。氷の上でもがく主人公たちと一緒に、映画を観る側もカーリングを学んでいくのだ。これは『シコふんじゃった』や『Shall we ダンス?』などの周防正行作品や、高校の女子ボート部を舞台にした『がんばっていきまっしょい』などに通じるスタイルだろう。競技にあまり熱心でなかった少女たちが静かに燃え始めたとき、観客の気持ちもまたメラメラと燃えるのだ!

2月18日公開予定 シネマミラノほか全国ロードショー
配給・宣伝:ドリームステージピクチャーズ、アットムービー・ジャパン、エスパース・サロウ
2006年|1時間53分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.sim-sons.com/
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