奥さまは魔女

2005/08/09 SPE試写室
往年の人気ドラマをモチーフにしたラブ・コメディ。
監督は『めぐり逢えたら』のノーラ・エフロン。by K. Hattori

 1964年から8年間アメリカで放送され日本でも人気を博したドラマシリーズ「奥さまは魔女」を、ニコール・キッドマン主演で映画用にリメイクしたもの。といってもこれは単に、ドラマの設定を映画に持ってきました……という作品ではない。人気ドラマ「奥さまは魔女」は映画の中で演じられる劇中劇。たまたま人間界にやってきた魔女が、ひょんな偶然からこの往年の人気ドラマのリメイク版に出演することになるのだ。人間界で本当の恋を探すため魔法を封印しようと心に決めた魔女が、魔女の役でテレビに出演して、夫役の俳優と本当に恋に落ちてしまう。かくして現実の魔女の身分を隠した魔女と人間の俳優の恋が、劇中劇の「奥さまは魔女」と同時進行していく。

 この凝った脚本を書き監督もしているのは、『めぐり逢えたら』や『ユー・ガット・メール』のノーラ・エフロン。なんと5年ぶりの新作映画だ。今回も姉妹のデリア・エフロンと共同で脚本を書いているが、超人気ドラマのリメイクという制約をうまく回避しながら、まったく新しい『奥さまは魔女』を作ることに成功していると思う。原作を尊重し、原作にまったく手を着けないまま、劇中劇でリメイク版を作るというアイデアは面白い。オリジナルの「奥さまは魔女」が大好きだった人たちも、原作のイメージを壊される心配をしなくて済む。それに登場人物の多くがオリジナル・シリーズの大ファンという設定もあって、「奥さまは魔女」ファンの観客は彼らにとても親近感を抱くに違いない。

 正直言って1967年生まれで38歳のニコール・キッドマンがこの役というのは、ちょっとキツイと思う瞬間も多々ある。世間知らずのお嬢さま魔女が、親の保護から独立して人間界で独り暮らし……というお話は、せめてヒロインがあと10歳ぐらい若くないと成立しないのではないだろうか。この映画にとって最大の弱点は、間違いなく主演女優の年齢だと思う。魔女である正体を隠すとか何とかと言う前に、まずはその年齢を最後まで隠しおおせるのかにハラハラさせられてしまった。いったいなぜ、この役がニコール・キッドマンでなければならなかったのか。例の「鼻ピクピク」が、彼女にしかできなかったとでも言うのだろうか。かといって、ニコール・キッドマンがミスキャストというわけではない。映画という「魔法」の力で、彼女がちゃんとヒロインに収まってしまうのはさすが。年齢不詳でいられるというのも、大女優の条件かもしれない。

 映画は最後の最後にフィクションの力を観客に訴えかけてジ・エンド。人は作り事の「物語」から勇気をもらったり、教訓を学んだりする。現実と虚構は、必ずしも明確に別れているわけではないのだ。虚構は現実の人生に影響を与え、現実の人生は虚構の読み方を変える。現実と虚構は密接に交流しあっているのだ。僕はこのラストを見て、大きくうなずきつつ感動してしまった。

(原題:Bewitched)

8月27日公開予定 丸の内ルーブルほか全国松竹東急系
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2005年|1時間43分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ|SDDS、SRD、ドルビー
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/bewitched/index.html
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