ダニー・ザ・ドッグ

2005/07/08 丸の内プラゼール
お話はまったくの漫画だがアクションで最後まで観せる。
ジェット・リーのアクションは最高。by K. Hattori

 『キス・オブ・ザ・ドラゴン』(01年)に続く、リュック・ベッソンとジェット・リーのコラボレーション映画。脚本はベッソンとロバート・マーク・ケイメンが共同で書き、監督は『トランスポーター』のルイ・レテリエ、アクション演出は『マトリックス』シリーズのユエン・ウーピンという顔ぶれ。この映画は共演者が豪華。主人公ダニーを助ける盲目の調律師役に、オスカー俳優のモーガン・フリーマン。悪役にはイギリスの名優ボブ・ホスキンス。話自体はまるで漫画かおとぎ話のような他愛のなさだが、こうしたベテラン俳優たちのコッテリした存在感が、この映画に厚みを与えている。

 借金の取り立てが主な稼業という三流ギャングのバートにとって、「飼犬」のダニーは最大の武器だった。子供の頃から武術だけを徹底的に仕込み、人間としての尊厳と無縁に育てられたダニーは、バートが命じるままに彼の敵対者と戦い、時には殺すことも厭わなかった。だがある日バートと移動中、敵の襲撃で蜂の巣になった車から命からがら逃げ出したダニーは、盲目のピアノ調律師サムに救われる。サムと娘のヴィクトリアのもとで、少しずつ人間らしい心を取り戻していくダニー。だがそんな幸せは長く続かなかった……。

 脚本は穴だらけで、少し考えれば誰もが「そんな事あるわけないだろ!」とツッコミを入れられる数々の矛盾や強引さに満ちている。幼い子供をさらってきて穴蔵に閉じ込めておくだけで、なぜ格闘技の達人になってしまうのかがそもそも疑問。格闘技の訓練には実践的なトレーニングが不可欠だから、子供の頃から英才教育をするなら専門のコーチも付けねばならないし、大勢の練習相手も必要になる。しかしそれでは「闘犬ダニー」は作れない。また身元不明のダニーがサムやビクトリアと一緒にアメリカに渡る場合、パスポートはどうやって取得するんだろうか……。

 しかしそうした脚本上の穴より観客を戸惑わせるのは、今年42歳のジェット・リーと、役柄の上では18歳という設定になっているヴィクトリアとの関係かもしれない。ダニーはいったい何歳という設定なんだ? ジェット・リーは童顔で年齢不詳の風貌だが、それでもクローズアップになったりすると、もう若くはないことがバレバレ。これはちょっと辛いな〜。

 そんなわけで決して出来のいい映画ではないのだが、最初から最後までちゃんと楽しめるのは、これがスター映画として十分に魅力的な作品に仕上がっているからだ。これはまずジェット・リーというスターを見せる映画であって、筋立てはそのための舞台装置に過ぎない。首輪の有無で人間性のない凶暴な闘犬と気弱な少年の人格を行き来してきたダニーが、サムやヴィクトリアとの生活を通して新しいダニーに生まれ変わる。ここでダニーの人格は完成する。ヴィクトリアが彼の首輪を外す場面が、じつはこの映画の本当のクライマックス。あとはオマケだ。

(原題:Danny the Dog)

6月25日公開 丸の内プラゼールほか全国松竹東急系
配給:アスミック・エース
2005年|1時間43分|フランス、アメリカ、イギリス、香港|カラー|2.35:1|DTS、Dolby Digital、SDDS
関連ホームページ:http://www.dannythedog.jp/
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