最後の恋のはじめ方

2005/3/11 ソニー・ピクチャーズ試写室
ウィル・スミスが初めて挑む本格的なラブ・コメディ。
脚本・演出・芝居が三拍子そろっている。by K. Hattori

 映画や小説の中の恋愛でも実際の恋愛でも、最初の難関はいかにして男と女を出会わせ、恋のきっかけをつかむかにある。“ボーイ・ミーツ・ガール”こそ恋愛の第一歩。しかしこの第一歩でつまずき、そこから先のめくるめく恋の喜びを味わえない人たちが大勢いる。アレックス・ヒッチの仕事はデート・コンサルタント。「恋のとっかかり」に悩む男たちにチャンスを与えるため、入念な調査と準備で相手の女性との出会いをお膳立てするのが彼の役目だ。恋のABCを熟知したヒッチだったが、ゴシップ専門紙の女性記者サラ・ミラスと出会ったことで、仕事と私生活の雲行きが怪しくなってくる……。

 ウィル・スミス主演のラブ・コメディで、相手役は『トレーニング・デイ』や『レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード』のエヴァ・メンデス。監督は『メラニーは行く!』のアンディ・テナント。大型アクション映画への出演が多いウィル・スミスだが、もともとは映画『私に近い6人の他人』(93年)で見せたような、やわらかい芝居もできる人なのだ。プレイボーイと気の強い女が出会って恋に落ちるありきたりな話ではあるが、そこに恋愛テクニックについてのレクチャーを仕込んでいく前半は新しい。デート・コンサルタントとかデーティング・コーチという職業は実在するそうで(まあ世の中にはありとあらゆる商売が存在するのであるが)、この映画の前半に盛り込まれている様々な恋愛テクニックやノウハウには誰しも興味を持つと思う。

 ケイト・ハドソンとマシュー・マコノヒーの『10日間で男を上手にフル方法』という映画があったが、この映画はその反対に「どうやって恋人を獲得するか」というノウハウをたっぷり詰め込んでいる分、人間の欲望に対してストレートかもしれない。ただし映画後半で少しずつ明らかになってくるのは、「恋愛に万能の方法論などない」「ノウハウだけの恋愛なんてない」「最後は本人の人間性で勝負」というごく当たり前で、誰もが納得できる恋愛の黄金率だ。

 映画は主人公の恋の物語と、彼の依頼人である会計士の恋の物語を併走させ、最後に同時にゴールさせる構成。どちらもありきたりな話なのだが、ありきたりとありきたりを掛け合わせて、見事にありきたり以上の面白さを生み出す手並みはなかなかのもの。会計士を演じたケヴィン・ジェームズはこれが映画デビューだというが、表情も豊かだし身体もよく動く芸達者。これから人気が出るかもしれない。ただし彼がほれ込む富豪令嬢役のアンバー・ヴァレッタは、やせっぽちなばかりで僕はあまり魅力を感じなかった。この役は演じる女優がもう少しチャーミングだと、より温かみのあるエピソードになったと思うんだけど。

 劇中で『ザ・エージェント』が引用されていたのが印象的。そうか、あの映画も既に古典扱いなのか!

(原題:Hitch)

6月4日公開予定 みゆき座ほか全国東宝洋画系
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2005年|1時間58分|アメリカ|カラー|シネスコサイズ|SDDS、SRD
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/
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