THE JUON

呪怨

2005/3/1 丸の内TOEI 2
『呪怨』シリーズの最新作はハリウッド・バージョンだった。
なんだかこの恐さに慣れてしまったなあ。by K. Hattori

 清水崇監督のホラー映画『呪怨』を、清水監督が自らハリウッドでリメイクした作品。このシリーズはビデオ版が2本、劇場版が2本既に作られているのだが、今回の映画は劇場版第1作目を、そのままハリウッドの俳優を使ってリメイクしたもの。僕はビデオ版を未見なのだが、今回の映画はビデオ版の設定を若干変えている様子。これは劇場1作目をベースに、まったく新しく生まれ変わった『呪怨』シリーズの別バージョンだ。

 痴呆老人の介護にやってきた女子大生が、そこで不気味な事件に巻き込まれる。そこから時間を前後させながら、この家に住んでいた一家とその関係者に起きた出来事や数年前の事件が語られていくというスタイルや筋立てはほとんど同じ。日本版で奥菜恵が演じていた役をサラ・ミシェル・ゲラーが演じ、問題の家にはアメリカ人が住んでいるという設定になっているだけだ。

 『呪怨』は登場人物ごとの視点で物語をばらばらにし、それが最後に大きなひとつの物語になるというパズルのような面白さがあったのだが、今回の映画では人物関係や時間軸を大幅に整理して、スッキリとわかりやすい話に改変されている。複数の人物の間で視点が移動していくニュアンスは残しつつ、映画全体としてはサラ・ミシェル・ゲラーから軸足を動かしていない感じだ。清水監督は『呪怨』の語り口をクシシュトフ・キェシロフスキの『デカローグ』から学んだというが、今回の映画はそんなヨーロッパスタイルが、見事にハリウッド映画に置き換わっているということだろうか。

 このシリーズはビデオ版の1作目が一番面白く、その後はどんどん面白くなくなる(恐くなくなる)と言われている。僕はビデオ版を見ていないのでそれについては何とも言えないが、劇場版2作を比べたときはやはり『呪怨』より『呪怨2』の方が恐さが薄れたと思ったし、今回の『THE JUON/呪怨』はもっと恐くない。これはあらかじめストーリーやショック描写の手の内を知っているという「慣れ」にもよるだろうが、それ以上に今回感じたのは「俊雄くんがな〜」ということだった。

 俊雄を演じている尾関優哉くんは96年生まれだから、劇場版1作目の『呪怨』(02)の段階では小学生になるかならないかぐらい。それが今回は3年生ぐらいになっているわけで、この年代の子供ってわずか2〜3年でずいぶん様子が変わってしまうものです。あどけなさが消えて、いっぱしの大人みたいな顔をするようになる。『呪怨』はビデオ版と劇場版で俊雄役の子役を交代させているのだから、ハリウッド版でも思い切って子役を変えたほうがよかったかもしれない。

 呪いの家で起きた事件の原因はビデオ版の設定を変更しているようで、それなら他の設定類も思い切って変更したほうがよかったかもしれない。全体的に準備不足で中途半端な印象が残る映画なのは残念。

(原題:The Grudge)

2月11日公開予定 渋谷東急ほか全国松竹東急系
配給:日本ヘラルド映画、クロックワークス
2004年|1時間38分|日本、アメリカ、ドイツ|カラー|1.85:1|DTS、Dolby Digital、SDDS
関連ホームページ:http://www.thejuon.com/
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