鉄人28号

2005/2/18 松竹試写室
漫画やアニメでおなじみ「鉄人28号」初の実写映画化だが……。
脚本にはもうひと工夫必要だったはず。by K. Hattori

 横山光輝の「鉄人28号」は日本における巨大ロボット漫画の元祖であり、その後の巨大ロボットものに多大な影響を与えた作品だ。「鉄人28号」がなければ、その後の「マジンガーZ」も「機動戦士ガンダム」もなかったに違いない。これまで何度もアニメになっているその古典が、今回初めて実写映画になった。監督は『ごめん』『星に願いを』を冨樫森。鉄人を操縦する正太郎少年を演じているのは、『ラストサムライ』にも出演していた池松壮亮。正太郎の両親には、薬師丸ひろ子、阿部寛。以下、大物俳優がずらりと並ぶ豪華キャストの映画になっている。

 原作の舞台は戦争の傷がまだ癒えない昭和30年代であり、鉄人28号も戦争中に開発された秘密兵器という設定だった。今回の映画では物語の舞台が現代になったが、鉄人が戦争中に開発された機械だという設定はそのまま。このあたりはずいぶん無理があるのたが、一応は辻褄が合うようなお話は作ってあるので目をつぶろう。正太郎君がネクタイに半ズボン姿になっているのは原作通りだが、ちゃんとこの格好が不自然にならない工夫もしてある。

 楽しいのは敵メカのブラックオックスが登場して東京を破壊していく場面。巨大なジェットアームが低空で飛び回るシーンから、増上寺での本体との合体、東京タワーをひねり倒して雄叫びを上げるまで、じつに格好よくできている。ただそれ以降の話はよくわからない。父親を喪失した正太郎が父の愛に気づいて成長していくという筋立てと、息子を失ったマッドサイエンティストがブラックオックスで東京を破壊するという話がうまくかみ合っていないなど、脚本に力強さが感じられないのだ。それにクライマックスからラストまでを観て気づいたけど、これって『アイアン・ジャイアント』の真似でしょう。それに気づいてしまうと、結構あちこちを真似しているよな〜。

 小さな子供と一緒に大人が観てもそれなりに楽しめる映画ではあると思うのだが、僕は主人公の正太郎があまり好きになれなかった。イジイジ悩んでいつも半べそかいているような、「機動戦士ガンダム」のアムロ・レイや「新世紀エヴァンゲリオン」の碇シンジの系列につながる現代っ子なのだ。親子関係の葛藤やトラウマというのは、もういい加減にやめてほしいような気もする。そうした葛藤が仮にあったとしても、それは物語の背後に下げておいたほうがよかったんじゃないだろうか。例えば『名探偵コナン』や『クレヨンしんちゃん』は、設定や物語に暗いところがあっても主人公は明るいではないか。

 なお「鉄人28号」は今川泰宏監督のアニメシリーズが昨年テレビで放送され好評だったが、今回の実写版では音楽の千住明が引き続き音楽担当となり、テレビアニメ版と同じく六本木男声合唱団の歌う主題歌「鉄人28号」もエンドロールで使われている。こういうのは、ちょっと嬉しい。

3月19日公開予定 新宿シネマミラノ、アミューズCQNほか全国ロードショー
配給:松竹
2004年|1時間54分|日本|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.tetsujin28.jp/
Click Here!
ホームページ
ホームページへ