ターミナル

2005/2/2 錦糸町シネマ8楽天地CINEMA5
アメリカ入国直前にパスポートが失効した男の奇妙な冒険。
面白いけど最後はちょっとわからない。by K. Hattori

 政変でパスポートが失効し、空港から出られなくなってしまった男の物語。パスポートなしではアメリカに入国できず、かといって混乱が続く祖国に戻ることもできないまま、男はJFK国際空港のターミナルで何ヶ月も過ごす羽目になる。所持金を両替できない無一文状態。しかも英語だってろくに喋れない。彼は空港の中で独学で英語を覚え、小銭を稼ぐ方法を身に付け、やがて空港で働くさまざまな人たちと親しくなっていく。空港の警備担当者と悶着を起こし、入国審査の女性係官と若い空港職員の仲を取り持ち、美しいスチュワーデスと恋をするその男は、はたして空港から出られるのか? そもそも彼は、何のためにニューヨークにやってきたのだろうか?

 主人公ビクター・ナボルスキーを演じるのはトム・ハンクス。彼を目の敵にする空港の警備担当をスタンリー・トゥッチが演じ、主人公と恋に落ちるスチュワーデスをキャサリン・ゼタ=ジョーンズが演じている。空港から出られなくなった男という話は、既にフランス映画『パリ空港の人々』がある。おそらく『ターミナル』は「空港から出られない男」というコンセプトをそこから借りて、アメリカ版を作ろうとした映画なのだろう。ハリウッド映画にしてはストーリーのカセが弱く、キャラクターとエピソード重視になっているのだが、これはフランス映画の影響かもしれない。

 映画を観ていて気になるのは、主人公が空港に居続けなければならない理由が、特にこれといって見つからないこと。彼は決まりを決して破らないバカ正直な男なのかと思ったら、それは映画の中盤にある薬についてのエピソードで軽く否定され、最後に彼が空港を出て行くシーンで完全に否定されてしまう。なら彼はなぜ何ヶ月もの間、わざわざ空港の中に居なければならなかったのだろう。ただしエピソードの羅列の中で、この疑問はさほど大きな障害にはなっていないと思う。

 それより気になったのは、主人公と恋に落ちるアメリアの扱い。普通のハリウッド映画だと最後は主人公が彼女と結ばれてハッピーエンドになりそうなものだけれど、この映画はあえてそうしていない。頭はよくて美人なのに、実りのない不倫の恋から抜け出せない、少しおっちょこちょいの女というキャラクターの狙いはわかる。ゼタ=ジョーンズもそんなアメリアを、うまく演じていたと思う。でもそれが最後に、やっぱり腑に落ちない結果を生むのはなぜだろう。空港のタクシー乗り場で最後にすれ違ったふたりの気持ちが、僕にはよくわからない。スピルバーグに男女の恋の機微を求めても無理なのか? ここがきれいに決まると、映画はずっとよくなったと思うけどな〜。

 登場人物にSFオタクが多いのはスピルバーグの趣味か。最後のジャズ演奏を軽く済ませてしまったのは、彼が往年のSFドラマほどにはジャズを愛していないせいかもしれない。

(原題:The Terminal)

12月18日公開 日劇1ほか全国東宝洋画系
配給:UIP
2004年|2時間9分|アメリカ|カラー|アメリカンビスタ|DTS、Dolby Digital、SDDS
関連ホームページ:http://www.terminal-movie.jp/
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