ファイティング・テンプテーションズ

2005/1/12 UIP試写室
キューバ・グッディング,Jr.とビヨンセ主演のゴスペル映画。
話はありきたりだが演奏シーンには大感動。by K. Hattori

 キューバ・グッディング,Jr.とビヨンセ・ノウルズ主演のゴスペル映画。都会の垢にまみれた罪深い男が、ひょんなことから教会の聖歌隊を指揮することになるというストーリー展開は『天使にラブ・ソングを…』の男女逆転バージョンだが、この映画に登場する聖歌隊は主人公も含めてすべてが不完全で弱く罪深い迷える子羊の群れ。それがゴスペルを通して新しい人生を踏み出していく様子は感動的だ。教会音楽や賛美歌としてのゴスペルが、かなり幅広い音楽形式の集合体であることも描かれ、黒人霊歌やブルースから黒人教会の中で発達したゴスペル音楽の歴史も含めて、この映画自体がちょっとしたゴスペル入門になっている。

 借金まみれで首が回らなくなっている広告マンのダリンは、死んだ叔母が残した15万ドルの遺産を相続するため生まれ故郷であるジョージア州の田舎町に戻る。だが遺産相続の条件は、ダリンが教会の聖歌隊を指揮してゴスペル大会で優勝することだった。喉から手が出るほど金がほしいダリンはこの話に飛びつくが、肝心の聖歌隊はメンバーも揃わずぼろぼろの状態。彼は幼馴染でクラブシンガーをしているリリーをリードボーカルに迎え、地域の刑務所からも歌自慢の囚人を獲得するなど、急ごしらえで聖歌隊のメンバー充実に励む。ダリンの奮闘もあって聖歌隊はめきめき力をつけていくのだが……。

 物語全体の流れはクラブ歌手が修道院の聖歌隊をゴスペルグループに作り変える『天使にラブ・ソングを…』と、少年少女によるゴスペルグループがコンテスト優勝を目指す続編『天使にラブ・ソングを2』の焼き直しだろう。そこに「遺産相続人が遺言に従って困難なチャレンジを強いられる」という話や、「都会で虚栄に満ちた生活をしていた主人公が、垢抜けないが素朴で充実した故郷に舞い戻る」という話、「排他的で保守的なコミュニティが型破りな男の登場で豊かさを取り戻す」という話など、これまでいろいろな映画で取り上げられてきたテーマを継ぎはぎしているのがこの映画だ。こうしたストーリーだけを取り上げれば、これは二番煎じ三番煎じもいいところ。筋立てには強引なところもあれば、ご都合主義なところも説明不足なところもある。

 しかしそうした欠点をすべて補って余りある魅力が、この映画には満ち満ちている。それは圧倒的な音楽のパワーであり、主演のグッディング,Jr.とビヨンセの生き生きとした存在感だ。ラストのコンサートシーンは圧巻。ひとりひとりは小さなつまらない存在でも、わたしたちはみんな愛されていると歌うこのシーンは、歌を使ってテーマを言葉で説明しているのだ。『二人または三人がわたしの名によって集まるところには、わたしもその中にいるのである』(マタイ18:20)という聖書の言葉の意味を、映像として示してくれたかのような名場面。僕はこのシーンに感激してちょっと涙ぐんでしまいました。

(原題:The Fighting Temptations)

2月12日公開予定 テアトル・タイムズスクエア
配給:UIP 配給協力:パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
2004年|2時間3分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|DTS、SRD、SR
関連ホームページ:http://www.uipjapan.com/
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