TUBE

2004/10/22 松竹試写室
地下鉄を乗っ取ったテロリストと彼に妻を殺された刑事の対決。
アクション要素がてんこ盛りの2時間弱。by K. Hattori

 物語の基本は起承転結が基本で、それは映画の場合も変わらない。アクション映画の場合、アクション満載のクライマックスは「転」から「結」の部分にあるのが普通。しかし観客を一気に物語に引き込むため、映画の導入部に小さなアクションシーンを入れることもある。例えば刑事ドラマで映画の導入部で主人公が犯人を逮捕するシーンを入れ(起)、その後にその犯人が脱走して(承)、人質を取って立て籠もったため警官隊と撃ち合いになり(転)、主人公が駆けつけて犯人を射殺する(結)といった具合だ。アクション映画と言えども、最初から最後までアクションばかりということはあり得ない。それでは観客がかえって飽きてしまうのだ。

 しかしこの『TUBE』は、そんな物語作りのセオリーをまったく無視している。この映画は最初から最後までアクションに次ぐアクション。映画導入部でいきなり空港での大銃撃戦が始まり、それはかなり長時間続く。デ・ニーロとアル・パチーノが共演した『ヒート』の銃撃戦もかくやという、銃弾が雨あられと発射され続ける撃ち合いだ。最初にこれだけ派手なことをやってしまうと、あとは徐々に尻すぼみになってしまいそうだが、この映画はそうならない。次から次へと、新手のアクションを繰り出して観客をドキドキさせる。

 監督・脚本は『シュリ』の脚色と助監督を担当していたというペク・ウナク。これがデビュー作だ。主人公のチャン刑事を演じるのは『燃ゆる月』に出演していたキム・ソックン。主人公と対決するテロリストのリーダー、ギテクを演じるのは『将軍の息子』シリーズのパク・サンミン。チャン刑事に一方的に好意を寄せる女スリのインギョン役で、『子猫をお願い』のペ・ドゥナが出演している。

 この映画の特徴は、物語の展開が異様なほどに早いことだ。僕は映画を観ながら、これは映写技師のミスで冒頭の1巻を映写機にかけ忘れたのだと思った。とにかく最初から話が通じない。観客側が話をよく飲み込めないうちに、登場人物たちはどんどん行動を起こす。なぜ銃撃戦が起きているのか。登場人物たちの間に、これまでにどんな関わり合いがあるのか。こうした基礎的な情報は、アクションシーンの合間の短い芝居や台詞、フラッシュバックとして挿入されるごく短い回想シーンで小出しに説明される。映画を最後まで観れば、だいたいすべての情報は観客の手にはいるという仕組みだ。

 別にこれがものすごくいい映画だとは思わないし、アクション映画として取り立てて高水準だとも思わない。ただ2時間弱の映画の中に、これだけあれこれとアクションの要素を詰め込んだサービス精神には敬服する。いやむしろこれは、観客へのサービスと言うより作り手側の欲張りだったのかもしれない。与えられたチャンスの中で、自分のやりたいことは全部やってしまおうという貪欲さが、映画から伝わってくるようにも思う。

(英題?:Tube)

11月6日公開予定 東劇ほか・全国松竹東急系
配給:松竹 宣伝:DROP
2003年|1時間56分|韓国|カラー|ビスタサイズ|SRD
関連ホームページ:http://www.tu-be.com/
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