僕の彼女を紹介します

2004/10/07 丸の内ピカデリー1
『猟奇的な彼女』の監督・主演女優が再びコンビを組んだ。
前半はとても楽しいのだけれど……。by K. Hattori

 『猟奇的な彼女』『ラブストーリー』のクァク・ジェヨン監督が、『猟奇的な彼女』のチョン・ジヒョンと再び組んだ作ったラブストーリー。前半でゲラゲラ笑わせ、後半で泣かせるという二階建て構造の映画だが、残念なことに僕は後半の泣きモードに入り損ねてしまった。理由は単純なことなので、その理由が苦にならない人は素直に後半で泣けるかもしれない。映画好きを自認する小泉首相にぜひ観ていただき、感想をうかがってみたい気がするけど……。(なぜ小泉首相なのかはまた後で。)

 ラブコメにしろ悲恋メロドラマにしろ、恋愛ドラマでもっとも大事なのは主人公たちがどう出会うかかもしれない。いわゆる「ボーイ・ミーツ・ガール」の瞬間だ。脚本も自ら書いているクァク・ジェヨン監督は、これに卓抜な才能を発揮する。電車の中で突然若い女にゲロをぶちまけられるという『猟奇的な彼女』もすごかったが、今回の『僕の彼女を紹介します』も相当に強烈。引ったくり犯の濡れ衣で2度も現行犯逮捕された男と、粗暴な(猟奇的な?)婦人警官が恋に堕ちるのだ。

 こうした突拍子もない設定を考えたとしても、それを観客に「納得」させるのは難しいと思うのだが、この監督は様々な手練手管を使って観客を強引にねじ伏せてしまう。これは映画の導入部の「出会い」もそうだし、映画の最後にあるもうひとつの「出会い」も同じこと。これには「納得」を通り越して「あぜん」とする人も多いのではないだろうか。でもまあ「こうなるしかないよな〜」というところにきちんと落ち着けるのだからすごい。

 映画前半のラブコメ部分はとても楽しく観られるもの。主人公たちが一緒に旅行までしているのに性的な関係にならない(なんとキスさえしない!)というのは意図的な演出なのだが、そこにまったく不自然さを感じさせないのはエピソードの組み立てがスムーズだからだ。それでいてこのふたりが、誰よりも心を許しあえる、深い愛情で結ばれたカップルであることもちゃんと伝わってくる。このあたりは『猟奇的な彼女』よりも上手いかも。

 しかし『猟奇的な彼女』ではたっぷり泣かされた僕が、なぜ今回泣けなかったのか。たぶん韓国の観客なら泣けるんだろうけど、僕も含めて日本人の客はかなり微妙だと思う。その理由は、「ここで泣け!」という映画のクライマックスで、X JAPANの「Tears」が高らかに鳴り響くからなのだ。主人公の台詞をかき消すぐらいの大音量で、日本語の歌詞が流れているというのは困る。別にX JAPANが嫌いなわけじゃないけれど、日本語の歌詞が持つ意味性が、その場でヒロインの気持ちに感情移入しようとしているこちらの気持ちを妨害してしまうのだ。

 これは日本公開版だけ、英語バージョンやインストルメンタルバージョンに差し替えられないのだろうか。その方が絶対に感動できると思うけどなぁ……。

(英題:Windstruck)

12月11日公開予定 丸の内プラゼール他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
2004年|2時間3分|韓国|カラー|シネマスコープ|SR、SRD、DTS、SDDS
関連ホームページ:http://www.bokukano.jp/
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