巴里の恋愛協奏曲(コンチェルト)

2004/09/21 GAGA試写室
1920年代の人気オペレッタをアラン・レネ監督が映画化。
恋愛のドタバタがなんとも楽しい。by K. Hattori

 既製曲の録音に合わせて俳優が口パクする異色のミュージカル映画『恋するシャンソン』で観客をびっくり仰天させたアラン・レネ監督が、1925年初演の人気オペレッタを映画化した作品。オペレッタとミュージカルの違いはかなり微妙なのだが、登場人物たちがその場の状況を歌で説明するというのはミュージカルにはあまりない演出だと思う。ただしこの映画の中でも当然人物の心情を描写した歌は当然あるわけで、そうした場面は紛れもないミュージカル・ナンバーになっている。

 舞台は1925年のパリ。製鉄会社の社長夫人として優雅な生活を満喫しているジルベルトには、夫に内緒の重大な秘密があった。それは彼女が米国暮らしをしていた頃、エリックというアメリカ人と結婚していたことだ。夫のジョルジュは「女は初めての男を決して忘れない」という信念を持ち主。自分が妻にとって「初めての男」だと信じる彼は、妻が周囲の男たちにいかにチヤホヤされようと、若い男と危険な火遊びをしていようと、決して焼き餅を焼くことなどない。「初めての男」である自分以外に、妻が心を動かされることなどあり得ないと確信しているからだ。だがそのジョルジュが新しいビジネスパートナーとして自宅に招いた相手こそ、ジルベルトの元夫エリックだったから大変! ジルベルトはエリックに、自分たちの結婚のことを硬く口止めするのだが……。

 恋のすれ違いにセックスがらみのエピソードがからんだ艶笑コメディ。セックスについてかなり露骨な話をしていても、決して下品にならない大人のためのラブコメディだ。こういう映画が昔はたくさん作られていたけれど、最近ではすっかり下火になっていた。20年代の舞台劇を映画化するというアイデアで、このジャンルが見事に復活しているのがかえって新鮮。ルビッチの『生活の設計』やMGMミュージカル『上流社会』などが好きな人は、この映画の狙いがよくわかると思う。

 オペレッタ映画としては、主人公ジルベルトを演じるサビーヌ・アゼマがまったく歌えないというのが大きな足かせになってしまったように思う。他の俳優も特に歌の訓練を受けてきた人たちではないようだが(ランベール・ウィルソンだけはプロの歌手でもあるので例外)、歌は聴いていてもさほど危なっかしさを感じない。でもアゼマの歌は音程も怪しければ声量も乏しく、まるで精彩が感じられないのだ。でもアラン・レネの映画でサビーヌ・アゼマが出演しないことは考えにくいし、今回の映画に出るとすればやはりこの役ってことになってしまうのかなぁ……。

 最後は見事に予定調和の中に収まるのが、こうした映画ではかえって気持ちいいし清々しい。男性の「処女幻想」など今では時代錯誤だが、映画の中でも最後はそれを笑って無効にしているので、現代の目から見ても違和感は感じられない。最後のカーテンコールに大感激する、楽しい2時間です。

(原題:Pas sur la bouche)

正月第1弾公開予定 シャンテシネ
配給:ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ
宣伝:ギャガGシネマ海、オフィス・エイト 協力:タキコーポレーション
2003年|1時間55分|フランス|カラー|ビスタサイズ|DOLBY SR、DOLBY DIGITAL、DTS
関連ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/
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