コニー&カーラ

2004/09/21 UIP試写室
ビリー・ワイルダーの傑作『お熱いのがお好き』の現代女性版。
次々登場するミュージカル・ナンバーが楽しい。by K. Hattori

 歌と踊りのステージショーでスターになることを夢見るコニーとカーラは、麻薬取引にまつわる殺人現場を目撃したことからギャングに追われることになる。着の身着のままで逃げ出したふたりは、ロスでドラッグクイーンのショーに飛び入り参加。口パクがほとんどのオーディションでパワフルな肉声を披露するふたりに、観客たちは大喝采を送り、ふたりはたちまちクラブの大スターになる。れっきとした女性であるにもかかわらず、女装のオカマとして生活しなければならなくなったふたり。やがてコニーには好きな男性ができたのだが、相手は“本当は男性”である自分を恋愛対象としては見てくれない。しかもショーの人気が高まったことから、ふたりの所在がギャングたちにも知られてしまい……。

 物語の下敷きになっているのは、ビリー・ワイルダーの傑作コメディ『お熱いのがお好き』だろう。売れないバンドマンふたりが殺人事件を目撃し、女ばかりのジャズバンドに女装して潜り込む。バンドマンのひとりはバンドの女性歌手が好きになるのだが、彼女は自分のことを女だと思っているので手が出せない。やがてふたりの所在がギャングの知られるところとなる話。筋立ての基本線は、2本の映画ともほぼ同じだ。『お熱いのがお好き』を男女逆転させ、使用楽曲を古いジャズから古今のミュージカル・ナンバーに入れ替え、舞台を現代のロサンゼルスに持ってくれば『コニー&カーラ』になるのだ。

 この映画では単に女性が男性に化けるだけでなく、その男性たちが女装しているというヒネリが加えられているのが面白い。『お熱いのがお好き』ではトニー・カーティスやジャック・レモンのオカマっぽい仕草や台詞回しの「不自然さ」が笑いの対象になっていたのだが、『コニー&カーラ』ではそれを現代の視点から批判している。世の中には女性っぽい服装をしたり、女性っぽい仕草や話し方をすることが「自然」な生き方だと感じる男性もいるのだ。21世紀版『お熱いのがお好き』は、社会的に差別されている性の少数派を徹底的に擁護し、それを物珍しさで眺めたり、正常からの逸脱だと見る目に徹底的に抗議する。映画としては『お熱いのがお好き』の方が断然上。でもこの映画を観た後は、『お熱いのがお好き』のオカマ・ジョークが古びて見える。

 次々登場するミュージカル・ナンバーや、華やかなステージショーがじつに楽しい。『お熱いのがお好き』に比べるとギャングがちょっとショボ過ぎるとか、マリリン・モンローに比べてデヴィッド・ドゥカヴニーはどうなのよとか、コニーの活躍ぶりに比べて相棒のカーラは影が薄いぞとか、言いたいことがないわけでもない。でも映画全編を貫くエンターテインメント精神に、まずは拍手喝采してしまうのだ。ミュージカル好きにとっては、『雨に唄えば』のデビー・レイノルズが久々に映画の中で歌って踊るというだけでも感涙ものだよ!

(原題:Connie and Carla)

11月13日公開予定 日比谷スカラ座2他、全国順次公開
配給:UIP 宣伝・問合せ:キャシディ
2004年|1時間38分|アメリカ|カラー|DTS、ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.uipjapan.com/connie-carla/
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