ターンレフト ターンライト

2004/09/17 ワーナー試写室
芸術的な対称形のすれ違いを続ける恋人たちの様子が面白い。
強烈な脇役のキャラクターもチャーミング。by K. Hattori

 『LOVERS』の金城武と『再見ツァイツェン/また逢う日まで』のジジ・リョンが主演のラブストーリー。このふたりは99年の『君のいた永遠(とき)』でも恋人同士の役で共演していて、今回が2度目の共演だという。原作はジミー・リャオの絵本「君のいる場所」で、映画の中にもジミー・リャオ本人がゲスト出演している。劇中印象的に使われているヴィスワヴァ・シンボルスカの「恋」という詩は、映画のために探したものではなく原作で引用されているものらしい。映画向けに大幅な脚色はしているのだろうが、要所要所で原作を踏まえた映画になっているようだ。

 世渡りが下手で才能がなかなか認められないバイオリン弾きのジョン・リュウと、能力はあるのに仕事に恵まれない通訳のイブ・ツァイ。ふたりは同じマンションのすぐ隣の部屋に住んでいるのだが、互いにまったく存在を知らぬまま暮らしている。そのふたりがたまたま公演で出会い、声を交わす。そこで明らかになったのは、ふたりが十数年前の少年少女時代に一度出会っていたという事実だった。これぞ運命の導きだ。ふたりは互いの名も告げぬまま、電話番号を交換して別れる。ところが番号を書いたメモは突然の雨でぐしょ濡れになり、せっかくの番号はインクが流れてしまった。ふたりは互いに連絡を取りたいのに、まったく連絡を取る手段を失ってしまうのだった……。

 同じマンションで壁1枚隔てて暮らしている男女が、互いの存在をまったく知らぬまますれ違い続けるという運命のいたずら。何度も繰り返されるすれ違いを、男女公平に、鏡に映したように対称的に描いていく面白さ。しかし話ががぜん面白さを増すのは、主人公たちに横恋慕するにぎやかな脇役が登場する映画の中盤からだろう。

 イブに一方的に迫ってストーカーまがいの行動をする若い医者と、風邪で寝込んだジョンに弁当を届けるうちに彼にぞっこんになるシャオホン。迷惑この上ないこのふたりが、単調なすれ違いドラマを引っかき回すアクセントになっている。このふたりが登場しなければ、この映画はひどくつまらないものになっていたことは間違いないだろう。ドクター・フー役のエドマンド・チェンはシンガポールの人気俳優。シャオホン役のテリー・クワンはこの映画で台湾金馬奨の助演女優賞にノミネートされたという。(彼女は武田真治と共演した『猫をお願い』が台湾映画祭2003で紹介されているが、日本で劇場公開される映画は本作『ターンレフト〜』が初めてのようだ。)

 主人公たちに徹底して対称的なすれ違いを繰り返させる様子はパズルのようで、ハラハラドキドキする以前に次々出てくるすれ違いのアイデアに感心してしまう。この対称形を崩さないまま、どうやって物語をハッピーエンドにするのかがひどく気になる映画だったのだが、最後の最後にまさかあんな形でエンディングがやって来るとは!

(原題:向左走・向右走 Turn Left, Turn Right)

今秋公開予定 シネマミラノ
配給:ワーナー・ブラザース
2003年|1時間39分|香港、シンガポール|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.warnerbros.co.jp/
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