クルテクとズデネック・ミレルの世界

2004/07/21 映画美学校第2試写室
特集上映される26作品から何本かを試写で観てきた。
『イモムシくんは大スター』が好き! by K. Hattori

 モグラを主人公にした短編アニメ「クルテク」シリーズで有名なチェコのアニメ作家ズデネック・ミレルの作品26本を、3つのプログラムに分けて特集上映。今回はその中から何本かを試写で観てきたので、以下にその感想。ただしお昼過ぎの試写で観ている途中ウトウトしていたものもあるので、これが試写でかかった全部というわけではない。

 『知りたがりワンちゃんとこいぬ』は、全部で3本ある「知りたがりワンちゃん」シリーズの1本。夜中に川から聞こえてくるうるさい声に寝不足気味のワンちゃんだったが、ある朝その水辺で小さな卵を見つける。これは子犬が生まれるに違いない!と思ったが、生まれてきたのはオタマジャクシ。オタマジャクシにはやがて足が生え、手が生え、あっという間に立派なカエルに成長する。ちょっと残念なワンちゃんだったが、それでもかわいいカエルたちに囲まれて、夜はすやすや眠りましたとさ……。卵がカエルになるのに、わずか1日。でもこのスピードがいい。

 少年の吹くハモニカに合わせてダンスを踊る毛虫が、一躍大スターになるという『イモムシくんは大スター』はとにかくかく主役の3人がかわいい。イモムシもチャーミングなら、相棒の少年もかわいいし、興行主のおじさんもいい人そう。今回観た中では、これが一番のお気に入り。一般に嫌われ者の代名詞である「毛虫」を、スターにするという発想も面白い。

 若くして結婚した夫婦が別れて、一人娘は母親が引き取ることになった。ところがこの母が「恋多き女」で、次から次に恋人や夫を取っ替え引っ替えしていく……というお話を、幼い娘の視点で描いたのが『お父さんは12人』。これは母の愛情に飢えた娘の気持ちを描く深刻な話なのだが、絵柄がかわいらしいのと物語のテンポがいいので、そうした深刻さや暗さがあまり気にならない。男性の職業をコスチュームで表現しているのだが、次々に出てくるありとあらゆる職業にちょっとビックリ。面白い。楽しい。

 逆にとてつもなく暗いのが『ヘルゴランド島のロマンス』という作品。資産家の男と灯台守の娘が恋に落ちるが、その恋は父親のせいで悲劇に終わるという話。台詞のない無言の芝居の中で、登場人物たちの気持ちが煮詰まっていく。追いつめられてよからぬことを思いつく父親と、どこまでも恋に殉じようとする娘の対比が悲しい。

 他の作品では『月のおはなし』を少し覚えているが、あとは眠ってしまった。ほとんど台詞がなく、絵だけでストーリーを理解させる作品ばかりなので、観ている方に元気がないとついて行けなくなってしまうようだ。特集上映ではDVD未収録の「クルテク」シリーズや、「こおろぎくん」シリーズなども上映される。それにしてもチェコはアニメ大国だ。こうした作品がどっと日本に紹介されることで、日本のアニメにも新しい養分が補充されるのではないだろうか。

9月下旬公開予定 K's cinema
配給:アットアームズ、レンコープレーション
1948-2002年|チェコ|カラー
関連ホームページ:http://www32.ocn.ne.jp/‾rencom/
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