セクシードリンク大作戦〜神様のくれた酒

2004/06/25 サンプルビデオ
本田隆一監督が片桐華子主演で描く過酷な禁酒ドラマ。
アル中が主役の映画には名作が多いが。by K. Hattori

 19歳のフリーター榊ミキは、二十歳の誕生日を前にして禁酒を決意する。じつは彼女、十代の終わりにして重度のアルコール依存症、いわゆるアル中になっていたのだ。飲めば底なし。酒が切れるとイライラする。それだけでなく、最近では体調も少しおかしい。最愛の恋人タカシに、自分がアル中だなんて知られたくない。かくして彼女は一念発起。中国秘伝の酒断ち薬を手に入れて、生涯酒と手を切ることを決心するのだった。この丸薬を1粒飲んで24時間酒を我慢すれば、それでもう酒が嫌いな身体に生まれ変われる。ただし24時間以内に酒を1滴でも飲めば、恐ろしい副作用が待っているという。だが薬を飲んで一晩たった翌朝早くから、ミキは猛烈に酒が飲みたい欲求を感じていた。

 『東京ハレンチ天国〜さよならのブルース』の本田隆一監督による長編劇場映画第2弾。ヒロインの榊ミキを、カルト深夜番組「バミリオン・プレジャー・ナイト」やドラマ「大奥」に出演していた片桐華子が演じている。元アイドル歌手だったとは思えないぶっとんだ演技。アルコールが切れて白目をむいてよだれをたらすとか、うつろな表情で買い物時の商店街をさまよい、何事かブツブツつぶやきつつ通行人に片っ端からケンカを売って歩くシーンはすごい迫力。ホームページを見るとこの人の肩書きが「キャラクター女優」になっているんですけど、「キャラクター」ってなんだよ〜。白目むいて別人に成りきるってことか?

 物語はアルコールの禁断症状に苦しむミキがいかにして試練を克服し、24時間の禁酒に成功するのか、あるいは失敗するのかを描くのだが、佐藤佐吉の脚本はそれと同じくらいの比重で周辺人物たちのおかしくも悲しい日常を描いていく。恋人に殴られながら金をむしり取られ、最後は売春まがいのことまでさせられてしまうミキの親友・理絵。ミキの恋人タカシと理絵の恋人は漫才コンビを組んでいるのだが、彼らが売り出しのために身体を張った売り込みをするくだりもかなり悲惨。だがこの映画の中でももっとも謎めいているのは、ミキをすぐそばで見つめ続けている自称「神様」だろう。

 山本浩司演じるこの神様はミキの酒断ちに協力するのだが、そもそもこの神様、ここに至るまで一体なにをしていたのか、どこから現れてどこに消えていくのか、映画を観ていてもさっぱりわけがわからない。ハリウッド映画にもよく出てくるガーディアン・エンジェルのような役回りなのだが、それよりずっと卑俗な感じがするし、最後の最後まで怪しさが払拭できないのだ。この一途なまでの怪しさがいい。

 GS風のエレキ音楽が挿入されるくだりなどは本田隆一監督ならではだが、少し前に観た『プッシーキャット大作戦』の強烈な世界観に比べると、今回の映画には本田流昭和テイストの必然性が希薄。エレキサウンドや神様のサイケファッションは、いささか取って付けた印象が残る。

7月31日公開予定 シネマアートン下北沢
配給:エス・エス・エム
2004年|1時間6分|日本|カラー|ステレオ
関連ホームページ:http://www.ssm-japan.com/
ホームページ
ホームページへ