ビバ・アルジェリア!

2004/06/16 パシフィコ横浜
政情が安定してきたアルジェリアの現在を描く作品。
ヒロインの行く末がちょっと心配。by K. Hattori

 パリ生まれのアルジェリア人監督ナディール・モクネッシュが、祖国アルジェリアで撮った女性映画。ヒロインのグセムは写真店に勤める28歳の独身女性。テロを逃れて郊外の家を離れ、現在は都市中心部の安ホテルで母親と二人暮らしをしている。彼女の目下の望みは、不倫中の医師ヤシーヌと結婚することだが、彼はなかなか妻と離婚する気配がない。仕事にもあまり身が入らず、客あしらいもぞんざいな彼女にとって、唯一の友人はホテルの隣室に済む娼婦のフィフィ。だが生活のすべてがうまくいかないグセムが、ちょっとした気まぐれでフィフィの客からあるものをくすねたことが大事件に発展する。

 アルジェリアは1962年に独立するまでフランスの植民地だったこともあり、文化面ではフランスの強い影響下にある。公用語はアラビア語だが、フランス語も広く使われていて、この映画の中で使用されている言語もフランス語だ。この映画では主演のリュブナ・アザバルがベルギー出身で、フィフィ役のナディア・カシはフランスの女優。こうしたキャスティングで、ちゃんとアルジェリアの映画が作れてしまうというのが、アルジェリアとフランスの強い結びつきの証明のようにも思える。なおアルジェリアを舞台にしたフランス映画には、ジャン・ギャバン主演の『望郷』がある。

 1992年頃からイスラム原理主義過激派によるテロが活発化し、アルジェリアの国内情勢は大幅に悪化した。この映画の主人公は地方に家があるのだが、テロを避けるために都市部に出てきているという設定だ。ここ何年かで政情が安定化してきていることもあり、ヒロインの母パピシャは娘と口げんかをするたびに「家に帰る」と言い出す。これに対して、娘のグセムは、都市で暮らし続けることを選択しているように見える。

 この映画はグセムの姿を通して、生活に確固たる基盤を持てない都市住人の姿を描こうとしているのだと思う。グセムもフィフィも都市で暮らしてはいるが、その暮らしぶりには堅実さがまるでない。グセムは仕事も中途半端だし、恋愛も宙ぶらりんの状態。フィフィに至っては、客の気まぐれであっというまにこの世から抹殺されてしまうのだ。都市の中で浮遊する人々は、いったいどこにたどり着くのだろうか。

 これに対してヒロインの母パピシャは、テレビの前で叶わぬ夢ばかり見ているようでいて、最後にはその夢を実現させてしまうしぶとさを持っている。元踊り子で歌手だった彼女はかつて働いていたナイトクラブを買い取って再見しようとかけずり回る中で、そのクラブの持ち主となっているかつてのひいき客と再会し、彼のクラブで再び歌手として活動を始めるのだ。「家に帰る」と言い続けてきた母が結局は都市で生活の基盤を作り、都市で生きようとしていた娘の方は街に拒絶されてしまうのは皮肉だ。

 それにしても、わけもわからず殺されてしまうフィフィは気の毒です。

(原題:Viva Laldjerie)

6月16日上映 パシフィコ横浜
第12回フランス映画祭横浜2004
配給:未定
2004年|1時間53分|フランス、アルジェリア、ベルギー|カラー|ドルビー
関連ホームページ:http://www.unifrance.jp/yokohama/
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