ハリー・ポッターとアズカバンの囚人

2004/06/04 ワーナー試写室
監督交代で期待した第3弾だが脚本がかなり窮屈な仕上がり。
キャラクターやエピソードに膨らみがない。by K. Hattori

 ハリー・ポッター・シリーズの第3弾は、監督がクリス・コロンバスからアルフォンソ・キュアロンに交代している。キュアロン監督は『リトル・プリンセス』というファンタジックな児童映画の傑作を撮っている監督だから、今回の映画もきっといいものになるだろうと期待していたのだが、残念ながら映画の中にキュアロン監督らしい持ち味はあまり感じられなかった。全2作に比べて少しビターな味の作品になっているが、これはキュアロン監督の問題ではなく、主人公が最初から命を狙われているというストーリーによるものだと思う。

 原作は1作目から巻を追うごとに分厚くなっていくのだが、今回の映画はシリーズ中もっとも上映時間が短いものになった。しかしハリーたちの1年の学園生活を1本の映画の中に盛り込むという構成は変わらないので、映画は各エピソードがひどく駆け足になり、エピソードごとの膨らみはほとんど期待できない。ストーリーの概略や骨組みだけが目立つ、がりがりにやせ細った映画になっている。今回の映画にもシリーズでお馴染みの人物が登場してくるのだが、それらはほとんど顔見せだけに終わってしまい、その人物らしい活動の場さえ与えられていない。物語はハリー、ロン、ハーマイオニーの3人を中心に、ごくごく小さな範囲で展開していくだけなのだ。物語のスケールは大きくなったはずなのに、ドラマの展開はせせこましい。

 最初から豪華キャストで製作されていたシリーズだが、今回はまた一段と豪華なキャスティングになっている。リチャード・ハリスの死去により、ダンブルドア校長役はマイケル・ガンボンに交代。闇の魔術への対抗術の授業を新たに受け持つルーピン先生役にはデイビッド・シューリス。占い学のトレローニー先生にエマ・トンプソン。謎の男ピーター・ペティグリューにティモシー・スポール。そしてアズカバンからの脱獄囚シリウス・ブラックには、ゲイリー・オールドマンが扮しているのだ。でも映画があまりに駆け足で、こうした登場人物たちがスクリーンに映っている時間は短い。物語のキーパーソンである人たちも、突然画面に現れたと思うとあっという間に消えてしまう。なんとももったいない。これならもっと無名の俳優でも効果は同じではないのか。もっとも登場する時間が少ないからこそ、そこには存在感や風格を感じさせる一流の俳優が必要だったという考え方もできる。

 映画としては導入部の、ハリーがホグワーツに到着するまでが比較的面白い。全体的にこのぐらいのペースで進んでくれるとよかったのだが、それだと上映時間は3時間を超えてしまったかもしれない。ロンとハーマイオニーの関係がこれまでにない親密さを増している様子が微笑ましく、これは次回へのお楽しみだ。次の映画ではハリーの恋も描かれるはず。でも次の原作は長いぞ。脚本家は頭を悩ませるところだよなぁ……。

(原題:Harry Potter and the Prisoner of Azkaban)

6月26日公開予定 丸の内ピカデリー1他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
2004年|2時間22分|アメリカ|カラー|シネマスコープ・サイズ|SRD、DTS、SDDS
関連ホームページ:http://www.harrypotter.jp/
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