名探偵コナン

銀翼の奇術師〈マジシャン〉

2004/05/02 ニュー東宝シネマ
丹念な取材がリアリティを生んだ航空パニック。
話は弱いがそれなりに楽しめる。by K. Hattori

 劇場版『名探偵コナン』の第8弾。映画とは別にテレビシリーズも進行していることで、物語に入る前の説明が1作ごとに長くなる傾向があるのはご愛敬。GW期間中と言うこともあってか映画館の中はかなりの混雑。親子連れから若いカップルまで、幅広い観客層に受け入れられているのが、このシリーズの人気になっているのだと思う。これは『クレヨンしんちゃん』にはないものだろう。あっちに若いカップルはいないと思うしなぁ……。

 大女優・牧樹里のもとに送りつけられた、怪盗キッドの謎めいた犯行予告状。相談を持ち込まれた毛利探偵事務所は、キッドが狙うスターサファイアを守るべく、警察と協力して万全の警備体制を引くことになった。もちろんコナンたちもこれに同行する。毛利探偵は犯行が舞台の上で行われると推理し、その推理通りにキッドも現場に現れる。だがキッドは宝石を盗み出せないまま逃走。コナンはこのわかりやすすぎる犯行未遂逃亡劇に、説明のしにくい違和感を感じていた。舞台公演の無事終了と怪盗キッド撃退の祝いを兼ねて、牧樹里は身辺のスタッフと毛利事務所の面々を北海道旅行に招待する。そして事件は、移動の飛行機の中で起きた……。

 映画の後半では飛行機の中での密室殺人が起きるのだが、この事件が「怪盗キッドによる犯行予告」という本来の物語とまったく無関係に発生しているため、物語の腰がここで折れてしまう。映画後半の大スペクタクルをこの事件から導き出したいという意図はわかるが、犯人は同じ飛行機の中に名探偵の毛利小五郎が乗っていることをあらかじめ知っているのに、なぜここでわざわざ事件を起こすかなぁ……。まぁこういうのは名探偵ものには必ずついて回る不思議ではあるけど、普通は「偶然その場に名探偵が」ということになるか、犯人側の探偵への挑戦という形になるんじゃないだろうか。

 映画前半でキッドが工藤新一に変装するというアイデアは面白いのだが、新一が出現すれば当然蘭は動揺するだろう。キッドが蘭の心をもてあそんでいるようで、ちょっと不愉快な筋立てだ。映画を作っている方もそれは感じていたようで、蘭の気持ちの揺れについてはあっさりとした描写になっている。なんだかもったいないなぁ。どうせなら映画の終盤でも新一に変装したキッドを登場させて、蘭をはげましてほしかったと思う。

 映画中盤から始まる飛行機の中の密室ミステリーは、このシリーズの取材力の確かさを感じさせる見応えのあるサスペンスになっている。飛行機のドアをどう閉めるかを、これほど念入りに描写したアニメは珍しいのではないだろうか。こうした細部の描写が、航空パニックの定番ストーリーに一定の説得力を生み出している。普通はどう考えたって、小学生と女子高生が飛行機を着陸させるはずないんでね……。それにしても、怪盗キッドは予告状を出す前にちゃんと下調べをしておいた方がいいと思うぞ。

4月17日公開予定 ニュー東宝シネマ他、全国東宝洋画系
配給:東宝
2004年|1時間48分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.conan-movie.jp/
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