ディボース・ショウ

2004/04/24 新宿武蔵野館2
離婚で一攫千金を狙う女と離婚弁護士が恋に落ちた?
話に軽さとスピード感がない。退屈。by K. Hattori

 訴訟社会アメリカの中ですっかりビジネスと化している離婚訴訟のドタバタを皮肉る、コーエン兄弟のブラック・コメディ映画。主演はジョージ・クルーニーとキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。さらにジェフリー・ラッシュやビリー・ボブ・ソーントンがちょい役出演するという豪華版なのだが、どういうわけかあまり面白くない。思うにこれは配役など映画の仕掛けが豪華な割に、ストーリーや演出にそれを引っ張るだけのパワーがなかったのではないだろうか。

 とにかく全体にモサモサして、話のテンポが悪いのだ。荷台にたっぷり豪華な商品を乗せたトラックが、原付バイクのエンジンしか搭載していないとこんな感じになるかもしれない。話の立ち上がりからノロノロ運転で、いつまでたっても観客の期待するトップスピードにならない。映画を観ている方はさっさと車のスピードを上げて高速道路にでも乗ってほしいのに、この映画は自宅前の道路から自宅横のガレージまでしかドラマを運んでいない。「これでおしまい」と言われても、「なんだそりゃ?」という気分なのだ。

 主人公は離婚訴訟で連戦連勝の敏腕弁護士マイルズ・マッシーと、金持ちと結婚して離婚慰謝料をふんだくろうとしているマリリン。富豪の夫の浮気現場をつかまえたマリリンだったが、夫が雇ったマイルズの巧みな法廷戦術で、一銭の慰謝料も取れないまま放り出されてしまう。だがマリリンは転んでもただでは起きなかった。「今度は純愛よ!」とテキサスの富豪と再婚したマリリンは、しっかり半年後に離婚して大金持ちに。そんな彼女の危険な魅力に、マッシーは惹きつけられていくのだが……。

 金のために結婚するヒロインと、そんな彼女のたくらみを知りながら彼女に惹かれる男。主人公たちは騙し騙され、足を引っ張り合う。脇役は涙もろい同僚弁護士、ミイラのような弁護士事務所の会長、浮気した妻に身ぐるみはがれたテレビ番組プロデューサー、田舎っぺ丸出しの石油王、やたら騒々しい私立探偵など変わり者ばかり。これはロマコメやラブコメというより、スクリューボール・コメディを作るつもりだったのだろう。でもスクリューボール・コメディに不可欠なスピード感が、この映画にはまったくない。不自然な設定だろうと苦しい物語展開だろうと、有無を言わさず観客をねじ伏せてしまう腕力がこの映画には欠けている。

 そもそも主人公たちが年を取りすぎなのだ。このふたりは結婚やお金についてはよく知っていても、恋愛については素人で世間知らずという設定だろう。ならばマイルズはせめて30代半ば、おそらくコーエン兄弟がこの映画の参考にしたであろうプレストン・スタージェスのスクリューボール・コメディ『レディ・イブ』のヘンリー・フォンダと同じぐらいの年齢にしてほしい。それだけでもこの映画は、ずいぶんと身軽になるだろう。コーエン兄弟の趣味じゃないのかもしれないけどさ……。

(原題:Intolerable Cruelty)

4月10日公開 日劇1他・全国東宝洋画系
配給:UIP
2003年|1時間42分|アメリカ|カラー
関連ホームページ:http://www.uipjapan.com/divorce-show/
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