ワンピース

呪われた聖剣

2004/03/10 丸の内東映
劇場版「ワンピース」の第5弾はゾロが主役の伝奇編。
七星剣の呪いから世界を救うのは……。by K. Hattori

 人気アニメ「ワンピース」の劇場版第5弾は、呪われた宝剣を巡る冒険と友情の物語。伝説の七星剣を求めてアスカ島にやってきたルフィたちのもとから、突然ゾロの姿が消える。彼は幼なじみのサガに誘われるまま、アスカ島にある海軍道場に身を寄せていたのだ。じつはサガが持っている剣こそ、伝説の宝剣・七星剣。それは古代アスカを滅ぼした、呪いの込められた妖剣だったのだ。ルフィたちはアスカの巫女の末裔マヤたちの村に招かれるが、そこを襲ってきたのが海軍道場の面々。その中にはゾロの姿もあった。彼らはマヤの持つ宝玉を奪って行った。いったい彼らは何が狙いなのか……?

 呪いの剣が持つ者を狂わせ、やがて恐るべき力を発揮する。剣を持つ者は力を求めて謀略を巡らし、それを阻もうと戦う者たちと衝突する。これは林不亡の「丹下左膳」にも出てくるような古典的アイデア。今回の『ワンピース』ではここに、剣の呪いに取りつかれた男サガと、彼を正気に引き戻そうとするゾロの友情をからめている。いつもは脇役のゾロが主役になるユニークなエピソードだが、そこに本来の主役であるルフィや他のメンバーもからんでくるため、話が二方面に別れてしまったのは残念。しかもルフィたちのドタバタの方が、映画としては面白かったりするのだ……。

 幼い頃から同じ道場で学び、それぞれ「正義の剣」を極めようとするサガと、「誰にも負けない大剣豪」を目指してきたゾロ。だが「正義」を求めるサガの心が、いつしか魔性の剣に蝕まれていく。「力無き正義に意味なし」「力こそ正義だ!」と、七星剣を使って周囲の人の心を操り、伝説通りに世界を闇に包み込もうと画策するサガ。理想を求める戦いの中で傷つき、剣の魔力にからめ取られていくサガの心理をもう少し丁寧に描いてくれると、この映画はもっと面白くなったし、テーマも明確になったように思う。

 理想を見失い暴走するサガと、どこまでも理想を追い求めていくゾロ。その対比がこの映画のテーマだと思う。人は理想を追い続ければ、いつか「なりたい者」になれるのだ。それは「海賊王に俺はなる!」と言い切ってしまうルフィも同じこと。ルフィはゾロがどんなに不可解な行動を取っても、「あいつは大剣豪になるんだ」と信じ切っている。自分の夢を追い続けているルフィは、ゾロもまた自分と同じように夢を追う男であることを信じることで、彼とつながっているのかもしれない。このあたりが、ゴーイング・メリー号の仲間たちの、ちょっとクールな、それでいて固い絆のもとになっているのかも。

 物語がやや予定調和に過ぎる気がする。登場する悪党たちも結局は「七星剣に操られていました」ということで、特におとがめはないということか。主人公が巨大な悪と戦い勝利することで得られるカタルシスが、今回の映画には欠けている。こういうものはやっぱり「正義は必ず勝つ!」で締めくくってほしい。

3月6日公開予定 丸の内東映他、全国東映系
配給:東映
2004年|1時間30分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.toei-anim.co.jp/movie/2004_onepiece/
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