あなたにも書ける恋愛小説

2004/03/10 GAGA試写室
ケイト・ハドソンとルーク・ウィルソン主演のラブコメディ。
なんと実話がもとになってます。by K. Hattori

 アレックスは人生最大の危機に追い込まれていた。小説家として編集者からのウケもいい彼だが、欠点はギャンブルが大好きなこと。新作小説の前渡し金2万5千ドルは、あっという間にギャンブルに消えた。しかもそれだけでは飽きたらず、荒っぽいキューバ人から5万ドルもの大金を借りて、これもあっという間にすってしまう始末。貸した金の返済を迫るキューバ人たちに、あと30日以内に小説を完成させて金を返すと誓うアレックスだが、肝心の小説はまだ1行も書けていない。絶体絶命の彼は速記者を雇って、新作を口述筆記させようとする。やってきたのはエマという速記者だったのだが……。

 ケイト・ハドソンとルーク・ウィルソン主演のラブ・コメディ。監督は『恋人たちの予感』のロブ・ライナー。脚本を書いたのは『バガー・ヴァンスの伝説』のジェレミー・レヴェンだが、もともとはロシアの文豪ドストエフスキーが代表作のひとつ「賭博者」を書いた時のエピソードがもとになっている。ドストエフスキーもギャンブル好きで借金まみれになり、速記者を雇って「賭博者」を書いたのだ。この共同作業がきっかけとなり、作家と速記者は結婚することになる。映画はこの実話を現代に移している。ストーリーはいささか古風な感じがするが、ケイト・ハドソンのはじけるような魅力で、ちゃんと現代のラブストーリーとしての成立しているのは見事。

 映画は2つのパートに別れていて、それが交互に進行していく。ひとつは借金まみれの小説家と速記タイピストの共同作業。もうひとつはそこで生み出されていく物語の世界だ。本来別々に存在するはずのふたつのパートが、やがてひとつに合流していくのが面白い。実生活が小説の中に反映し、小説世界が実生活に反映するのだ。小説世界の舞台は1920年代のリゾート地。現実世界のアレックスとエマが、20年代風のコスチュームで物語の世界にも登場する。そこでアレックス扮する主人公を翻弄するのはフランス人の美女ポリーナで、演じているのはソフィー・マルソーだ。

 映画は現実世界のシーンで小説家と速記者のふたりが中心になり、書かれている小説の中では家庭教師にやってきたギャンブル好きの青年とフランス人の美女、そして青年に思いを寄せるメイドの三角関係が展開するというシンプルなもの。だがメイドの性格付けが次々に変化していったり、現実世界の小説家と速記者の関係が少しずつ小説中に反映していったりして、微妙な波風が立つことになる。そして最後に現れるのが、小説の中で主人公を翻弄し続ける美女ポリーナ!

 このまま舞台劇としても通用しそうな小さなドラマ。シナリオを戯曲用に書き換えて、舞台ミュージカルにでもすると面白そうだ。まぁそんなことを考えてしまうのは、この映画が「映画作品」としては小品で、少し物足りなさが残るからかもしれない。面白いんだけど、軽すぎるのかなぁ。

(原題:Alex and Emma)

5月公開予定 日比谷スカラ座2
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
2003年|1時間35分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル、ドルビーSR、SDDS
関連ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/anaren/
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