ハッピー・フライト

2004/02/24 GAGA試写室
グウィネス・パルトロウ扮する田舎娘が一流スチュワーデスを目指す。
シンプルで力強いアメリカン・ドリームの物語。by K. Hattori

 生まれ育った小さな町を脱出するため、一念発起して航空会社のスチュワーデスになったドナ。だが町を出るという夢がかなったドナは、さらなる野心をめらめらと燃やす。弱小会社のスチュワーデスで一生を終わりたくない! 仲間たちと名門ロイヤリティ航空のスチュワーデス募集に応募したドナは、見事合格して研修を好成績で終了。だが修了試験を終えたドナを待っていたのは、会社の中でもずっと格下の国内便の仕事だった。自分よりはるかに成績の悪そうな仲間は、花形の大都市便や国際便の仕事に就いているというのに……。泣き言を言っていても仕方がない。来年の試験まではじっと我慢するしかないのだ。そんなドナの前に、弁護士になる勉強を再開した以前のボーイフレンドが現れる。

 グウィネス・パルトロウ主演のアメリカ版「スチュワーデス物語」だが、主人公はドジでノロマな亀ではなく、素晴らしい才能を秘めているという設定。その才能を認めて後押ししたり引っ張り上げたりしようとする人がいる一方で、その才能を妬んで足を引っ張ろうとする人もいる。だが最終的に彼女の前に立ちふさがるのは、彼女自身が抱える「成功」に対する大きなコンプレックスだった……というお話。監督は傑作『クアトロ・ディアス』のブラジル人監督ブルーノ・バレット。本作でデビューする脚本家エリック・ウォルドは、友人から大手航空会社の研修について話を聞いたことからこの作品の着想を得たという。

 物語はシンプルで余計なひねりがない。これを肯定的にとらえるか、物足りないと感じるかは人によって違うだろう。しかしこの飾り気のなさが、映画のスピード感と力強さを生み出していることは間違いない。主人公の人生双六はトントン拍子の右肩上がり。最後は大きな成功が約束されていて、主人公は仕事の成功と愛情の両方を手に入れる。個性豊かな登場人物たちが主人公の周辺にちりばめられているが、それが物語の中央にまで余計に出しゃばってくることはない。ケリー・プレストンもマイク・マイヤーズもキャンディス・バーゲンもクリスティナ・アップルゲイトも、ほどよいところで物語から退場していく。しかも忘れがたい印象を残しながら。

 地方の貧しい田舎娘から国際線のスチュワーデスへとステップアップしていくヒロインの変化を、ファッションやメイクで見事に表現しているのも上手い。パルトロウは貧しい階級から高貴なお金持ちのお嬢様まで演じ分けられる女優だが、ここでは1本の映画の中でその幅を駆使してみせる。田舎の航空会社と大手の一流会社の格差を、いかにもそれらしく表現してみせる美術の仕事も見事だ。

 エンディングがちょっとくどいのだが、これを観るとマイク・マイヤーズの登場シーンが、本来はもっと長かったらしいことがわかる。最終的にはそれをバッサリと切って、主人公の成長物語にまとめ上げたのかな。気持ちいい映画です。

(原題:View from the Top)

GW公開予定 日比谷スカラ座2
配給:ギャガ・コミュニケーションズ 宣伝:ギャガ宣伝イースト、アニープラネット
2003年|1時間27分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル、SDDS、ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.happyflight.com/
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