ネコのミヌース

2004/02/19 映画美学校第2試写室
人間になったネコと気の弱い新聞記者が活躍するファンタジー。
映画の面白さがぎっしり詰まったファミリー映画だ。by K. Hattori


 弱気な性格からまともな取材ができない新聞記者ティベは、ある日犬に驚いて木に登った若い女性を目撃する。その夜、その女性はティベの部屋に現れてゴミ箱の魚の骨をあさっていた。彼女の名はミヌース。本当はネコなのだが、気が付いたら人間の女の姿になっていたという。このヘンテコな女性を追っ払おうとしたティベだったが、彼女が仲間のネコから聞きつけたという金貨の話は特ダネのスクープ記事に。これに気をよくしたティベは、ミヌースを自分専用の情報収集係として部屋に住まわせることにした。ミヌースの協力で次々に特ダネをものにするティベ。だがある日彼のもとに飛び込んできたのは、町の名士であるエレメート氏が車で当て逃げをしたという事件だった……。

 原作はアニー・M・G・シュミットの同名小説。世界10カ国以上で翻訳されている人気作で、日本でも徳間書店から邦訳が出版されている。その映画化であるこの映画はオランダで大ヒットし、オランダのアカデミー賞に相当するオランダ映画祭で作品賞と主演女優賞を獲得したとか。なるほど、それもこの映画を観れば十分納得できる。この映画には、映画のいろんな楽しみがぎっしり詰まっているのだ。ネコが人間になるというファンタジー。ダメ人間が強くたくましく変身していく成長ドラマ。小さな平和な町の背後にうごめく陰謀。交通事故を巡るミステリー。試練にさらされる信頼と友情。主人公たちのラブストーリー。そして観客の誰もが頬を筋肉をゆるめてしまうであろう、愛らしいネコたちの姿。

 ミヌースを演じたカリス・ファン・ハウテンのネコぶりはなかなか堂に入っているが、これは仕草などを無理矢理ネコに似せず、ここぞという時にネコの癖が出るという設定と演出の効果も大きいと思う。あまりネコネコしてしまうと、ティベとの関係が何やらおかしくなってしまう。ミヌースは「ネコが人間の姿になった」のではなく、「人間になった元ネコ」でなければならない。もっともこうした変化は物語の中で徐々に進行しているようにも思われ、最後になってミヌースがようやく人間になったのだと解釈することもできる。この点はかなり曖昧。曖昧と言えば、ティベがいつミヌースを「ネコ」と認識したのかも曖昧だ。しかしこうした曖昧さこそが、この映画の魅力なのだ。

 主役ふたりだけでなく、脇役たちも個性豊かで魅力的だ。大家の娘ビビや、魚屋のハリー。ネコ好きの市長や、大口スポンサーに弱い新聞社の女性編集長。少ない登場シーンでも、それぞれの人物がじつにいきいきと描かれている。たくさん登場するネコたちの演技もなかなかのもの。

 試写は原語の字幕付きだったが、劇場公開では字幕版に日本語吹替え版を交えてDLP上映するという。吹き替えを担当するのは室井滋と利重剛。間違いなく家族みんなで楽しめる映画なので、小さな子供がいる人は日本語版を選ぶといいだろう。

(原題:Minoes)

3月公開予定 ポレポレ東中野
配給:シネマ・クロッキオ
2001年|1時間23分|オランダ|カラー|ビスタ(1:1.85)|ドルビーデジタル
関連ホームページ:
http://www.nekonominoes.com/

DVD:ネコのミヌース
原作:ネコのミヌース(アニー・M・G・シュミット)
関連DVD:フィンセント・バル監督
関連DVD:カリス・ファン・ハウテン
関連DVD:テオ・マーセン

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