ほたるの星

2004/02/05 TCC試写室
学校そばの小川にホタルを甦らせようとする教師と生徒たち。
実話をもとにしたドラマ。下手くそだけど好感が持てる。by K. Hattori


 3度目の教職試験でようやく念願の小学校教師になった三輪元は、山口県の農村地帯にある木造校舎の小学校に赴任する。子供たちのやんちゃぶりに手を焼き、保護者からの突き上げに困り果てることもあるが、やがて教室は大きくかわりはじめる。そのきっかけは課外授業ででかけた近くの川で、元が何気なく「こんな川にホタルがいたらなぁ」とつぶやいたことだった。元のクラスではホタルの生態について調べ、ホタルの幼虫を飼育し始める。学校側は渋い顔をしていたが、クラスはホタル飼育で少しずつひとつにまとまってくるのだ。だがそんなクラスの輪の中に、ひとりだけ入れない少女がいた。母親と死別し、父親の暴力から逃れて親戚の家から学校に通うヒカリだ。そんな彼女も、ホタル飼育を通じて少しずつ心を開いていくのだが……。

 監督は『ぼくらの七日間戦争』や『ときめきメモリアル』など、美少女アイドル映画を何本か撮っている菅原浩志。僕はこの人の映画をこれまでに何本か観てきたが、その中では今回の『ほたるの星』が一番面白かったし、よくできた映画だとも思う。映画の序盤から中盤まではちょっと不安定なところもあるのだが、中盤以降はじつにいい。映画に多少ギクシャクしたところもあるのだが、それが主演の小澤征悦の素朴なキャラクターと上手い具合に噛み合って、新人教師の不器用な奮闘ぶりにリアリティが生まれている。登場する子供たちも、みょうに芝居が上手でないのがいい。

 映画の導入部が少しもたつくのが、前半のテンポの悪さの一番の原因だろう。これは脚本が悪いのだと思う。主人公がボイラーマンのアルバイトをしているのはいいとしても、この描写がやけに長い。ここはもっとサラリと流して、主人公が別の仕事で生活の糧を得ながら、やっとのことで小学校教師になったということだけがわかればいいはず。教室で自己紹介をする場面もとっつきが悪いし、その後で映画のもうひとりの主人公となるヒカリが登場する場面も印象が薄い。クラスの悪たれコンビがじつに生き生きした腕白坊主に描かれていたのに比べると、ヒカリ登場にはもう少し工夫があってもよかったと思う。また山本未来が演じる保険医も、物語の中のポジションとしてもう少し何かあってもよかったんじゃないだろうか。

 ホタルの幼虫をどこから手に入れたのかがよくわからなかったし、上級生に荒らされた水槽にどうしてホタルの幼虫が戻ったのかも不明。そうしたつながりの悪さはありながらも、主人公を中心にクラスがまとまっていく様子は見ていて気持ちいい。ラストシーンのホタルは数が多すぎる気がしたが、あれは登場人物たちの心象風景としてのホタルの乱舞だろう。ヒカリ役の菅谷梨沙子が健気でいい。真っ暗な中でカワニナを集めるシーンや、最後に本当に会いたかった人に出会うシーンでは思わず涙がほろり。上手い映画ではないけれど、作り手の優しさが伝わってくる。

初夏 新宿武蔵野館他・全国洋画系
3月13日公開予定 山口県先行ロードショー
配給:角川大映映画、シネボイス
2003年|1時間41分|日本|カラー|ビスタサイズ
関連ホームページ:
http://kadokawa-daiei.com/

DVD:ほたるの星
ノベライズ本:ほたるの星(宗田理)
関連DVD:菅原浩志監督
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