ロード・オブ・ザ・リング
〈スペシャル・エクステンデッド・エディション〉

2004/01/21 東劇
最初の劇場公開より時間が30分延びて物語世界がより豊かになった。
ホビット庄の風景と戦闘シーンのコントラストが効果的。by K. Hattori


 2001年に公開されるや世界的な大ヒットとなった『ロード・オブ・ザ・リング』(日本公開は翌年)は、最初の劇場公開バージョンでも2時間58分という大長編。その後DVDで発売された「スペシャル・エクステンデッド・エディション」は、そこに未公開シーンを加えた再編集版で、劇場公開より30分長い3時間28分だった。当初は劇場公開される予定のなかったDVD限定バージョンだが、日本では公開が遅れている第3部『王の帰還』までのつなぎに『ロード・オブ・ザ・リング』と『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』の「スペシャル・エクステンデッド・エディション」が2週間ずつ限定公開されることになった。これはDVDをデジタルプロジェクターで上映するわけではない。(じつはDVD上映というイベントも過去にあったのだ。)このために用意されたフィルムにちゃんと字幕を入れてての限定ロードショー公開だ。

 僕は『ロード・オブ・ザ・リング』を1度しか観ていないので今回ロングバージョンを観ても具体的にどこがどう長くなったのかよくわからないが、印象としては導入部のホビット庄(シャイア)のシーンがずいぶん長くなっているように思う。平和で牧歌的なホビットの暮らしぶりを丁寧に描写することで、その暮らしを犠牲にして旅なければならなかったフロドの責任感と義務感の大きさが強く伝わってくるし、裂け谷で傷を癒すフロドを危険な旅から解放させてやりたいと願うガンダルフの気持ちもよくわかる。指輪をホビット庄から持ち出すという任務を終えてようやく肩の荷を下ろしたフロドが、世界を救うために指輪を捨てる旅へと出発志願する悲壮な決意には、思わず涙が出てきそうになるではないか。彼は平和な暮らしの中で冒険を望んでいた。でも危険な旅の中で死にそうな目に遭いながら、もう自分の以前の暮らしに戻りたいと心から願っているのだ。彼が平和な暮らしに戻ることを望んだとしても、誰も彼を非難はしないだろう。でもフロドは旅に出なければならない。自分以外の誰も、その困難な任務を果たすことができないことを知ってしまったからだ。

 今回の映画では、フロドがホビット社会の中では名門に属していることがよくわかる。フロドに従うサムたちの行動は単なる友情や好奇心ではなく、名門バギンズ家の総領フロドを支える忠誠心によるものであるらしいことがわかる。貴族と臣下の関係に近いようだ。こうした二つ国の社会構造が今回のスペシャル・エクステンデッド・エディションでは豊かに再現されていると思うのだが、これは単に1度劇場版で話を飲み込んでいるため、見落としていたディテールに目が届くようになっただけの話かもしれない。

 最初の劇場版の方がストーリーとしてはテンポが良かったのも事実だが、一度こちらを観てしまうともう劇場版には戻れないだろう。次は『二つの塔』も観るぞ!

(原題:THE LORD OF THE RINGS: THE FELLOWSHIP OF THE RING (Special Extended Edition))

1月10日公開 東劇
配給:日本ヘラルド映画、松竹
2001年|3時間29分|ニュージーランド、アメリカ|カラー|シネマスコープ|DTS、ドルビーEX、SDDS
関連ホームページ:
http://www.lotr.jp/

DVD:ロード・オブ・ザ・リング ― スペシャル・エクステンデッド・エディション
DVD:ロード・オブ・ザ・リング ― コレクターズ・エディション
DVD:ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 ― スペシャル・エクステンデッド・エディション
DVD:ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 ― コレクターズ・エディション
サントラCD:ロード・オブ・ザ・リング
サントラCD:ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔
サントラCD:ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還
原作:新版 指輪物語 全9巻セット(文庫)
原作:新版 指輪物語 全7巻セット(単行本)
原作:カラー新版 指輪物語 全3巻
関連DVD:ピーター・ジャクソン
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