ギャザリング

2004/01/19 映画美学校第2試写室
自動車事故で記憶喪失になった若い女と古代の聖堂の関係は?
西欧に伝わる伝説を元にしたオカルト・スリラー。by K. Hattori


 イエス・キリストが十字架で処刑された際、遺体を引き取ったのは裕福なユダヤ人議員のアリマタヤのヨセフだった。彼はイエスの遺体を自分の家の墓に埋葬したが、その後の彼がどうしたのかは聖書に何も書かれていない。伝説によるとアリマタヤのヨセフは聖槍と聖杯を持ってイギリスに渡り、グラストンベリーに最初の教会を建てたのだという。もちろんそれは後世に成立した伝説で、歴史学者でその史実性を信じる者などだれもいない。だがある日グラストンベリーの丘陵地帯で、1世紀の古い聖堂が発見された……。

 クリスティーナ・リッチ主演のオカルト・スリラー。物語はグラストンベリーで古い聖堂が発見されたエピソードと、クリスティーナ・リッチ演じる記憶喪失の若い女が不気味な予知夢に悩まされるエピソードを平行して物語っていく。リッチは発見された教会の修復責任者宅に寄宿しており、ふたつのエピソードはごく近いところで進行していく。しかし内容的な接点がまったく見あたらず、ふたつのエピソードがうまくくっつかないまま映画が進行してしまうのは観ていて落ち着かない。

 これはヒロインの視点から見た物語として、脚本をまとめきれなかったところに問題があるようにも思う。映画は聖堂にまつわるエピソードに多くの時間を割いているのだが、これは序盤から中盤まで情報を小出しにして、後半から一気にドラマにからめていった方がよかっただろう。そうすれば教会側の対応の不可解さや不自然さも、あまり気にならなくなる。ただしヒロインの一人称でこのまま物語を進めると、これが世界的に大ヒットしたある映画とそっくりに思えてくるかもしれない。

 映画の根本的なアイデアはヒロインの正体が誰なのかではなく、古い聖堂に残されたレリーフは何を意味しているのかにある。ここで「アリマタヤのヨセフ」のブリテン伝道という伝説から、最後の審判まで世界を放浪する「さまよえるユダヤ人」の伝説にすり替わるあたりに、脚本としてもうひとつアイデアが欠けていたのかもしれない。「Aだと思ったらBだった」というのはドラマのポイントなので、ここで観客をあっと驚かせるアイデアがあると面白かったはずだ。

 物語のアイデアとしては面白いものを思いつきながら、既存のホラー映画にありがちな恐怖描写にそれを押し込めてしまい、本来の魅力を損じているのはもったいない。ギャザリング(群衆)は生身の人間なのに、まるで幽霊か何かのような描写にしてしまったのは脚本の意図とは異なるはずだ。予知夢の描写もありきたりで工夫がない。また中世に聖堂が埋められた理由も、何やら釈然としないまま終わってしまう中途半端さ。あとから考えれば「こういうことだろう」と推測はできるけれど、映画の締めくくりのことを考えると、聖堂を地中に封印せずにはおれない人間の恐怖心が観客にも伝わるようにしてほしかったと思う。

(原題:The Gathering)

2月28日公開予定 銀座シネパトス
配給:ギャガ・コミュニケーションズ 配給協力:LIBERO
2002年|1時間41分|アメリカ、イギリス|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:
http://www.gaga.ne.jp/

DVD:ギャザリング
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