けっこう仮面

2003/12/30 サンプルビデオ
永井豪の人気マンガを実写映画化。とにかくバカバカしい。
脱力を通り越して意識は桃源郷へとトリップ。by K. Hattori


 天才漫画家・永井豪が70年代に発表した「けっこう仮面」は、当時の少年たちにトラウマ的ショックを与えた問題作。その後91年から93年にかけて3本の実写映画が作られ、OVAも作られている人気キャラクターなのだ。今回はそれらの先行作品とは独立した、斎藤志乃主演の新シリーズ。物語の舞台は「スパルタ学園」から、女子アナ養成の虎の穴「マングリフォン・アナウンス学院」になっているが、変態教師が女子生徒をいたぶり、それを正義のヒロインけっこう仮面が救出するという世界観は丸ごと継承されている。それにしても、けっこう仮面の武器がヌンチャクというのが、なんとも70年代ですなぁ……。

 映画の作りはひたすら安っぽくてチャチでチープ。しかし赤い仮面で素顔を隠し、体はすっぽんぽんのスーパーヒロイン、必殺技は「おっぴろげジャンプ」というのが、そもそもナンセンスなのだ。こんなものをリアルに作ったら、ヒロインを含めた登場人物が全員アタマのおかしな人々に見えてしまう。もちろん変態教師たちはアタマがおかしくても構わないが、その毒牙にかかる女子生徒やヒロインは、あくまでも「正常」でならねばならない。この映画では描写のあまりの底抜けぶりに観ている側が思考停止状態になり、「正義と悪」「正常と異常」という単純な二元論の世界観にどっぷり浸りきれる仕掛けになっている。

 それにしてもなんというヘナチョコな映画なのだろうか。映画導入部からヘナヘナと身体の力が抜けていく脱力描写の数々。そもそも脚本がまったくデタラメ。学院側によるけっこう仮面の正体探しと、女子生徒をおとりにした罠の数々……というのが物語のおおまかなあらすじだが、これがまったくドラマらしいドラマを生み出さない。この映画には最初から、「ストーリーを語る」という意志がまるで見あたらないのだ。やっていることは変態教師たちによる女子生徒へのセクハラと、けっこう仮面と変態教師の泥臭いバトルのみ。あまりのアホらしさにしばし呆然とするが、これが何度か繰り返されると、なんだか楽しくなってきてしまうから不思議。ほのぼのと温かい気持ちになってくるなぁ。

 極めつけはクライマックスの決戦シーン。「まぼろしパンティ」から始まるダジャレの波状攻勢には笑ってしまうし、それをおおらか微笑みながら許してしまう永井豪本人の登場にも驚かされる。世知辛く不景気な今の世の中で、この大ざっぱさやいい加減さは貴重だ。

 出演者たちの悪のりぶりが見ものだが、中でも教頭役の石丸謙二郎が最高。結局この作品の面白さは、正義の味方のけっこう仮面より、変態教師の側にあるのではないだろうか。既にシリーズ2作目も作られているようだけれど、そちらでは教師の変態ぶりによりフォーカスを当ててほしいものだ。現実の「わいせつ教師」はいらないけれど、この映画の「変態教師」は面白いと思うぞ。

2月6日公開予定 アップリンク・ファクトリー
配給:アートポート
(2003年|1時間10分|日本)
関連ホームページ:
http://www.kekkou.jp/

DVD:けっこう仮面
原作:けっこう仮面(永井豪)
関連DVD:けっこう仮面 コンプリート・コレクション
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