メイキング・オブ・ドッグヴィル
〜告白〜

2003/12/19 GAGA試写室
『ドッグヴィル』の撮影現場に密着した1時間弱のドキュメンタリー映画。
告白室のアイデアは企画倒れの気がするけどね。by K. Hattori


 ラース・フォン・トリアーは貴族でもないくせに、自分の名前に勝手に「フォン」などというミドルネームをくっつけている。これはなぜか? スタジオに向かう車の中で、当のラース・フォン・トリアー本人がそれを自問自答しているのだから、この謎の答は永久に見つからないのかもしれない……。

 この映画はそんなトリアー監督の最新作『ドッグヴィル』の、メイキング・ドキュメンタリーだ。映画の中にはニコール・キッドマンやトリアー監督の他にも、ポール・ベタニー、ステラン・スカルスゲールド、ローレン・バコールなど、映画の出演者たちが総出演。このメイキングではこうした出演者たちに心情を語ってもらう装置として、スタジオの片隅に特製の「告白室」を準備しているのが面白い。俳優やスタッフたちはこの小部屋の中で、撮影にまつわる不平不満をぶちまけ、自分自身を慰めたり勇気づけたりする。これが『Dogville Confession』という原題につながっている。

 告白室の中でどんな爆弾発言が飛び出すかと期待していると、それほど面白いことを言う人がいないのは残念。せいぜいベン・ギャザラが面白かったぐらいで、主演のニコールなどはきれい事しか口にしていない印象を受ける。むしろトム役のポール・ベタニーが、ぶつぶつと不平不満を言っているのが好印象かな……。いずれにせよ、この映画の目玉は「告白」にはないという意味で、この映画のタイトルはいささか大げさかもしれない。映画の中で告白室がらみのシーンは全体の半分もないのではないだろうか。残りはごく普通の撮影風景ドキュメントだ。

 ただしこのドキュメントが、それなりに面白い。撮影現場で弱音を吐きっぱなしのラース・フォン・トリアーは、そのどぎつい作風からは想像もできないような、ナイーブで繊細な映画青年ぶりを発揮している。僕はいろいろな伝説や風聞から、もっとエキセントリックな監督だとばかり思っていたのですが……。案外普通じゃん!

 それにしてもニコール・キッドマンはいい女優になったと思う。『ドッグヴィル』の評価は人それぞれだと思うけれど、この映画で見せるニコール・キッドマンのお芝居には誰もが唸るはずだ。「ハリウッドの大スター(トム・クルーズ)の妻」という肩書きが撮れたことで、女優として今まさに大輪の花を咲かそうとしているのではないだろうか。いろいろと辛いこともあっただろうけれど、女優としての彼女はむしろ今がもっとも輝いている。ここ数年は『アザーズ』の母親役、『めぐりあう時間たち』の中年作家、『ドッグヴィル』の若い娘など、女優としていろいろな役にチャレンジしている。ハリウッド女優としての華やかさも持っている人だから、今後は大型作品での主役などで実力を発揮して貰いたいなぁ……。

 そうそう。トリアー監督は「キングダム」を完結させてほしいぞ。

(原題:Dogville Confession)

正月第2弾公開予定 シネマライズ(レイト)
配給:ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ
宣伝:ギャガGシネマ海
(2003年|0時間52分|デンマーク)
関連ホームページ:
http://www.gaga.ne.jp/dogville/

DVD:ドッグヴィル
関連DVD:ラース・フォン・トリアー監督 (2)
関連DVD:ニコール・キッドマン

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