ラブ・アクチュアリー

2003/12/10 UIP試写室
イギリスの映画スターが総出演したラブストーリー。
映画を観た後は誰もがニコリと笑えるはずです。by K. Hattori


 二枚目半のハンサム男を演じてきたヒュー・グラントが、なんと英国首相を演じるラブ・コメディ。こんな男に歴史と伝統のある英国の政治を任せて、本当に大丈夫なんだろうかと心配にもなる。面白かったのはイギリス人の中にも強い「反米感情」があるらしいことで、映画の中では記者会見で突如アメリカにケンカを売った英国首相に国民が拍手喝采するという場面がある。小泉首相も同じことをしたら、国民の支持率は一気に上昇するんじゃないだろうか。そういえば、小泉首相も独身だなぁ……。

 といったことは、この映画のほんの一部分。『ラブ・アクチュアリー』は中心となる主人公を置くことなく、複数の男女の恋愛模様を同時進行で描き出すラブストーリーだ。物語のクライマックスはクリスマスに置かれている。クリスマスになると、人は他人に対して寛容になる。自分の気持ちに正直になる。そして、そこに愛が生まれる。映画の中ではたくさんの別れと出会い、気持ちのすれ違い、誤解と和解、新たに生まれる深い絆などを描いて、観る人の気持ちを暖かくさせてくれる。

 複数のエピソードが同時進行していく映画なのでストーリーを要約することはできないが、まるでつまらないエピソードがひとつもないのはすごいことだと思う。登場しているのはすべて「普通の人々」で、特別にヒロイックな人も、特別に不幸な人も、特別に乱暴な人も登場しない。普通の人たちが、普通の日常の中で感じる喜怒哀楽のあやが、等身大に描き出されているのがこの映画のいいところだ。監督・脚本のリチャード・カーティスはこれが監督デビュー作だが、これまでにも『フォー・ウェディング』『ノッティングヒルの恋人』『ブリジット・ジョーンズの日記』といった作品で脚本を手がけてきた人。今回の作品もその延長にあるのだが、これまでの作品以上に繊細にできている。

 映画の中には思わずニヤニヤしてしまう場面がいくつもあり、観客が10人いれば10通りの名場面があると思う。僕にとって忘れがたいのは、結婚式でいきなりビートルズが流れ始める場面、ローラ・リニーが憧れの同僚を部屋に招き入れて「1秒だけ待って」と言う場面、見事にカムバックを果たした中年ロック歌手がパーティから戻ってくる場面など。ロック歌手役のビル・ナイは『スティル・クレイジー』でもロック歌手を演じていたが、今回演じたビリーという役はなかなかの傑物。映画の中ではローワン・アトキンソン演じるヘンテコなデパート店員以上に個性を発揮していた。

 ヒュー・グラント以外にも、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、アラン・リックマン、コリン・ファース、キーラ・ナイトレイなど、主演クラスの俳優たちが総出演。それでいて誰も出しゃばらず、きちんと自分の役を演じきっているアンサンブルの素晴らしさ。映画終盤ですべてのエピソードが合流していく様子も見事。音楽もよかった。

(原題:Love Actually)

2月上旬公開予定 日劇2他・全国東宝洋画系
配給:UIP
(2003年|2時間15分|イギリス、アメリカ)
関連ホームページ:
http://www.uipjapan.com/loveactually/

DVD:ラブ・アクチュアリー
サントラCD:ラブ・アクチュアリー
サントラCD:Love Actually
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