コルト・マルテーズ
皇帝(ツァー)の財宝を狙え!

2003/12/05 TCC試写室
フランスの人気コミック・シリーズを長編アニメーション映画化。
世界観と映画の規模がかみ合っていないかも。by K. Hattori


 イタリア出身のコミック作家ユーゴ・プラットの人気シリーズ「コルト・マルテーズ」を、日本でアニメの仕事をしていたこともあるパルカル・モレリ監督が映画化したアニメーション大作。第一次大戦直後の1919年、ロシア皇帝の残した莫大な財宝を乗せた装甲列車が、ロシアからシベリア経由で満州を目指す。中国の秘密結社レッド・ランタンから財宝強奪の依頼を受けた冒険家コルト・マルテーズは、相棒の脱走兵ラスプーチンと共に列車に向かうのだが……。

 キャラクターのデザインなどはよく言えばスタイリッシュ、悪く言えば格好つけすぎ。これは物語の筋立てや登場人物の台詞回し、エピソードの味付けなどについても言えることだ。要するにすべてのシーンが名場面であり、すべての台詞は警句めいた決め台詞のオンパレードになっている。こうした世界観が好きなファンにはたまらなく嬉しい内容かもしれないが、作品と初対面でいきなりこれはしんどい。登場人物全員が田村正和みたいな世界だぞ。これは疲れるなぁ……。

 登場人物のデザインに区別をつけるだけの記号的差異はあるが、本質的には全部同じようにナルシスティックなヒーローたち。善玉も悪玉も、男も女も、イギリス人もアメリカ人もロシア人も東洋人も、すべてファッションモデルのようにすらりとした体型。しかもそれが全員フランス語でしゃべってる。主人公のマルテーズやラスプーチンは別格としても、他の人物は途中で誰が誰だかわからなくなってきてしまった。

 革命軍と反革命軍が財宝の奪い合いをする話に、革命前の中国で群雄割拠する軍閥たちが関わり、それぞれが現実の歴史的事件をモデルにしたりヒントにしたりしているというお話。「コルト・マルテーズ」自体は十数冊に渡る長編シリーズで、マルテーズやラスプーチンといった人物はそれぞれこの映画では描ききれない背景を持っている。試写室で配られたプレス資料には登場人物たちの詳細なプロフィールが掲載されているのだが、それを観ると、この映画に描かれた物語は巨大な世界観の中にあるほんの一瞬の出来事で、背景にはさらにずっと大きな物語が隠されていることがわかる。ただしそれを、映画から読み取っていくことは難しい。

 例えばコルト・マルテーズに謎めいた言葉をかける魔女のような女は何者なのか。マルテーズが探している女は、彼とどんな関係を持っていたというのか。物語の導入部にあるこうした事柄について、その後詳しく説明されることはない。そもそもこの映画では、そうしたことを説明する気などないのだろう。映画がシリーズ化でもされれば、こうした事柄についても少しずつ別の側面が見えてくるのかもしれないが……。

 DVDで日本語吹替え版が作られれば、声質や台詞回しの違いでキャラクターの肉付けが違ってくるかもしれない。字幕を読みながらこの内容は、ちょっとばかり辛いですなぁ。

(原題:Corto Maltese: La cour secrete des Arcanes)

2004年2月中旬公開予定 シネマ・メディアージュ他・全国順次
配給:ファインフィルムズ 宣伝:クライドフィルムズ
(2002年|1時間32分|フランス、イタリア、ルクセンブルグ)
関連ホームページ:
http://www.clydefilms.co.jp/

DVD:コルト・マルテーズ
サントラCD:Corto Maltese
原作:Corto Malteseシリーズ
関連DVD:パスカル・モレリ監督

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