バレット・モンク
2003/11/21 東芝エンタテインメント試写室
秘密の力を秘めた巻物を守るため名無しのチベット僧がNYへ。
ジョン・ウー製作、チョウ・ユンファ主演のアクション映画。by K. Hattori
世界が戦争と混乱の中にあった1943年。俗世を離れたチベット奥地の僧院で、秘密の巻物を守り続ける僧侶たちがいた。その巻物には、人間の力を神の領域にまで高める秘密の言葉が記されているという。新たに巻物の守護者となるため名を捨てたひとりのチベット僧は、巻物を奪うため僧院を襲ったナチスドイツの将校ストラッカーの手を逃れ、たったひとりで世界を放浪することとなった。それから60年。名無しの僧は巻物の新たな守護者を探すため、ニューヨークに姿を現した。彼が目を付けたのは、映画館で働くカーという若者。だがかつて巻物を手に入れ損ねたストラッカーは、今もまだ名無しの僧を追っていた。はたして巻物は無事に、次の守護者へと継承できるのか……。
ジョン・ウー製作のファンタジックなアクション映画で、映画の雰囲気としては『ハイランダー』のアジア版とでも言えばいいのだろうか。太古より伝わる神秘の巻物を奪おうとする悪党を相手に、不老不死の力を身につけた名無しのチベット僧が戦う物語だ。主演はジョン・ウーと何度もコンビを組んでいるチョウ・ユンファ。共同製作にウーと常にコンビを組んでいるテレンス・チャン。監督はMTV出身のポール・ハンターという新人だが、演出手腕はまずまず及第点といったところだろうか。
チョウ・ユンファが演じているのは半世紀以上もたったひとりで世界を放浪してきた男だが、静かに微笑みながらそれでいて強さや厳しさを全身からオーラのように漂わせる一種のスーパーマン。高い精神性に加えて、この男は弾丸さえ受け付けない不死身の肉体を持っている。(原題の意味は「弾丸坊主」ではなく「防弾坊主」なのだ!)ほとんど弱点らしい弱点のないこんな男に、観客は容易に感情移入はできない。観客が肩入れする本当の主役は、『アメリカン・パイ』シリーズのショーン・ウィリアム・スコットが演じているカーと、バッドガール(ジェイド)を演じるモデル出身のジェイミー・キング。映画はこのふたりを主人公にした、青春ドラマのような趣もある。
物語はかなり大ざっぱだが、大ざっぱさの中に魅力があるのも事実。カーがアジア系映画館でカンフー映画を観ながら武術を独習したという設定など、真面目に取り合うのがバカバカしい荒唐無稽さだが、話が大ざっぱだからこの程度のことも許される。悪役がいまだにナチスというのも時代錯誤っぽいし、バッドガールの仲間たちが途中で消えてしまうのはもったいないし、オチが『リトル・ブッダ』というのもどんなもんだか……。でもそれが大きな致命傷になっていないのは、話がこの程度のものだからだ。
映画館のオヤジを演じたマコがいい。こういうところにひとりベテランが入ると、そこで画面がぎゅっと引き締まる。美術などにもそれなりにお金がかかっていて、話がゆるゆるのくせに映画としては極端に安っぽくなっていないと思う。
(原題:Bulletproof Monk)
1月17日公開予定 ニュー東宝シネマ他・全国東宝洋画系
配給:東芝エンタテインメント
(2003年|1時間43分|アメリカ)
ホームページ:http://dangun-bozu.jp/