デッドロック

2003/10/21 アミューズピクチャーズ試写室
ウェズリー・スナイプスとヴィング・レイムスが刑務所でボクシング。
ウォルター・ヒル監督お得意の男臭い映画だが……。by K. Hattori


 アメリカの刑務所では、囚人向けの様々な教育プログラムが用意されている。そのひとつとして行われているのが、半年に一度各刑務所から選手を出して行われる刑務所対抗のボクシング試合だ。荒っぽさと腕っ節の強さでは人後に落ちない男たちが、己の誇りを賭けて戦う真剣勝負の世界。この刑務所対抗戦で、10年間無敗のチャンピオンとして君臨し続けているのが、殺人罪で無期懲役を受けている元プロボクサーのモンローだった。もはや向かうところ敵なしという彼だったが、ある時強力なライバルが出現する。それは現役のヘビー級チャンピオンとして、人気実力共に世界ナンバーワンのアイスマンだ。レイプ容疑で逮捕された彼はモンローと同じ刑務所に収監されるや、刑務所ボクシングのチャンピオンを公然と挑発し始める。両雄並び立たず。塀の中でナンバーワンになった男と、塀の外でナンバーワンになった男は、特別試合で雌雄を決することとなる……。

 刑務所チャンピオンのモンローを演じるのは、ドラマものからアクション映画までこなす黒人俳優ウェズリー・スナイプス。マイク・タイソンを連想させる高慢なヘビー級チャンプに、『救命士』や『ミッション・インポッシブル』シリーズのヴィング・レイムス。試合でレフリーを務める刑務官にマイケル・ルーカー、ボクシング好きの老受刑者にピーター・フォークという、かなり渋めの配役になっている。出演者に女性がいないわけではないが、女っ気はゼロという男臭〜い映画なのだ。監督はこの手の男臭さを描かせればナンバーワンのウォルター・ヒル。

 囚人同士を戦わせる刑務所対抗ボクシング大会が実在するか否かは知らないが、この映画はいわゆる「刑務所映画」の定番エピソードから少し距離を置いた、リアルな世界観を作ろうとしているようだ。刑務所映画にありがちなサディスティックな看守や腹黒い刑務所長は登場しないし、囚人同士のトラブルから殺し合いに発展するような血なまぐささもない。秘密の脱走計画もなければ、殺伐とした刑務所の空気を和ませる聖人のような受刑者もなしだ。映画に登場する囚人たちは皆が皆そこそこのワルであり、刑務所の中で心をささくれ立たせて生きている。アイスマンは品性下劣な悪党だが、かといってモンローが聖人君子というわけでもない。どっちもどっちなのだ。

 登場人物のキャラクターなどもよく練られていて、なかなかよくできた脚本。映画の筋運びも悪くない。しかしこの映画、特に後半にはもっと粘っこさやねちっこさがほしかった。ウォルター・ヒルも、年取って枯れてきたなぁ……というのが僕の感想。男たちの汗の臭いが、この映画からはあまり伝わってこないのだ。なんだかみんな、シャワーでも浴びてきたかのようにコザッパリした印象のナイスガイばかり。刑務所映画の登場人物たちには、やはりもう少しクセのある連中がほしいなぁ〜。

(原題:Undisputed)

12月20日公開予定 新宿ジョイシネマ3、銀座シネパトス
配給・宣伝:アートポート
(2001年|1時間36分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.deadlock.jp/

DVD:デッドロック
サントラCD:Undisputed
輸入ビデオ:Undisputed
関連DVD:ウォルター・ヒル監督
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関連DVD:ヴィング・レイムス (2)
関連DVD:ピーター・フォーク
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