ジョニー・イングリッシュ

2003/10/11 日劇3
ローワン・アトキンソン主演のスパイ・パロディ映画。
もっと面白くなりそうな映画なんだけどなぁ……。by K. Hattori


 『ミスター・ビーン』シリーズのローワン・アトキンソンが主演した、スパイ映画のパロディ版。主人公ジョニー・イングリッシュは英国諜報部MI-7の調査担当者としてデスクワークの日々を送っていたが、現場担当のスパイが全員殺されてしまったことから(もちろんその原因はイングリッシュのミスである)、彼が現場の仕事にかり出されることになる。彼に与えられた任務は、英国国王の戴冠式に使う王冠の警備。ところが彼の目の前で、その王冠が盗まれてしまう。イングリッシュは王冠の修復を担当したフランス人、パフカル・ソヴァージュが犯人だと見抜くのだが、この犯行の裏にはもっと大きな陰謀が隠されていた……。

 素材としては面白くなりそうな映画なのだが、できあがった映画は期待にほど遠いものだった。その理由はまず第1にお話がつまらないこと。第2にギャグがつまらないことだ。イギリスは承知の通り立憲君主制の国で、政府も議会も名目上は国王(女王)の権限を代行しているに過ぎない。国はすべて王室のもので、国民は国王陛下の「臣民」なのだ。この理屈は歴史を無視した無茶な論理なのだが、まぁ映画だからこの程度は許してもいい。ソヴァージュは自分が国王になって英国を好き勝手にしようと企むのだが、だったら最初の王冠盗難はなんだったのか。女王に銃を突きつけて退位を迫るくらいなら、最初からそうするのが一番手っ取り早いだろう。このあたりは、王冠盗難事件と王室乗っ取りをつなぐ理由付けがほしかった。

 映画は全編にギャグが盛り込まれているのだが、ギャグの「数」は多くても、ギャグの「種類」が少なすぎる。この映画ではギャグの8割ほどが、イングリッシュの「勘違い」や「取り違え」というネタを使っている。つまり「Aだと思ったらBだった」「Bだと思っていたら本当はAだった」というパターンだ。ボールペンと秘密兵器の取り違え、泥棒と警備兵の勘違い、敵の本拠地の取り違え、自白剤と筋弛緩剤の取り違え、大司教と偽者の取り違え……。同じパターンのギャグを繰り返して笑いを引き出すという手法もあるけれど、この映画はそうした手法とはちょっと違うと思う。僕が面白いと思ったギャグは、間違って失神させてしまった女性職員を上司から隠すとか、回転寿司のレールにネクタイをはさまれるといった体を使ったギャグ。こういうギャグがもっとたくさんあると、映画はもっと面白くなったと思う。

 登場人物の性格付けも検討の余地ありだ。ソヴァージュにはあらかじめ「じつは下品で粗暴なヤツだがそれを隠している」という味付けをしておくと、クライマックスで彼が乱暴な口をきく場面が生きてくるだろう。主人公の助手をもっと優秀でハンサムな男にすると、主人公の三枚目ぶりが強調されたとも思う。こうした映画で登場人物たちに魅力が乏しいと、全体に薄っぺらになってしまうのだ。

(原題:Johnny English)

10月4日公開 日劇3他・全国東宝洋画系
配給:UIP
(2003年|1時間27分|イギリス)
ホームページ:
http://www.uipjapan.com/je/

DVD:ジョニー・イングリッシュ
サントラCD:ジョニー・イングリッシュ
サントラCD:Johnny English
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